今年の中国の春節(旧正月)連休では、AI(人工知能)を搭載した製品が新たな消費の主役となっている。特にAlibabaのAIを内蔵したスマートグラスは品切れが続出するほどの人気を集めており、政府によるデジタル製品への補助金政策もこの動きを後押ししている。

スマートグラスが品切れ続出

中国・重慶市のショッピングモール「光環購物公園」では、スマートグラスが人気を集めている。価格は数百元から数千元(数千円数万円)と幅広いが、特にAlibabaのLLM(大規模言語モデル)「Qwen通義千問)」を搭載した「クォークAIグラスS1」は品切れが続出している。

このスマートグラスは、レンズ上に文字情報を述べたできるほか、利用者が「これは何?」と尋ねると、対象物を認識して音声で回答する機能を備える。スマートフォンと連携し、出張や旅行、日常会話などでの活用が見込まれている。

ロボットやAIアプリも消費を牽引

AI製品の人気はグラスにとどまらない。中国のEC大手「JD.com(JD.com(京東)集団)」のデータによると、春節期間中のロボット関連の検索件数は前年同期比で300%以上増加。カスタマーサポートへの問い合わせも460%増、注文数は150%増となり、新規注文は100以上の都市に及んだと伝えている。

AIは贈答品の選択肢を変えるだけでなく、春節の伝統的な習慣にも浸透している。AIアプリを使って新年の記念写真やパーソナライズされたアバターを生成したり、デジタルグリーティングカードや新年の挨拶動画を作成したりする動きが広がっている。

政府の補助金がブームを後押し

このAI製品ブームは、政府の政策も追い風となっている。中国商務部など5部門は、2026年1月1日から、価格が6000元(約12万6000円)以下のスマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、スマートグラスなどのスマート製品に対し、15%の補助金を提供すると発表した。

補助金は、各種割引適用後の最終販売価格に基づいて計算される。1人1台限りで、上限は500元(約1万500円)となる。この政策が、消費者の購入意欲をさらに刺激している形だ。

日本市場への影響

中国の春節商戦におけるスマートグラスの爆発的売れ行きは、日本企業にとって二つの明確な機会とリスクを提示する。まず、Alibabaの「クォークAIグラスS1」が品切れ続出するほどの人気を博している事実は、AI搭載スマートデバイス市場が中国で急速に立ち上がりつつあることを示唆する。この市場は、単なるガジェット消費に留まらず、AIによる「これは何?」といった物体認識機能や、スマートフォン連携による旅行・日常会話支援といった実用的な付加価値が消費者の購買意欲を刺激している。日本の電機メーカーやソフトウェア開発企業は、この実用性重視のトレンドを捉え、自社のAI技術や光学技術を応用した製品開発を加速させるべきである。

次に、中国政府が6000元以下のスマート製品に対し15%の補助金(上限500元)を提供する政策は、価格競争が激化する可能性を意味する。この補助金は、消費者の購入敷居を下げ、市場規模を拡大させる一方で、低価格帯での競争を一層激化させる。日本の企業は、高機能・高価格帯での差別化だけでなく、中国市場向けに補助金制度を考慮した価格戦略や、現地企業との連携によるコスト競争力強化を検討する必要がある。

最後に、JD.comのデータが示すロボット関連検索300%増、カスタマーサポート問い合わせ460%増といったAI製品全般への関心の高まりは、日本のAI関連サービス企業にとってのビジネスチャンスである。特に、カスタマーサポート分野でのAI活用は、日本企業が強みを持つ可能性がある。中国市場の需要を捉え、AIソリューションの提供を加速させることで、新たな収益源を確保できるだろう。