米国の厳しい輸出規制を受け、中国が半導体の国産化を急いでいる。政府は巨額の国家基金を設立して国内企業を強力に支援し、サプライチェーンの自立を目指す。しかし、先端技術へのアクセスが断たれたことで、その道のりは依然として険しいものとなっている。

国家主導の巨額投資

中国政府は半導体産業を国家安全保障の根幹と位置づけ、国産化を最重要課題に掲げている。その中核をなすのが、2014年に設立された国家集積回路産業投資基金、通によると「大基金」だ。これまでに2期で総額3400億元(約7兆円)以上を造成し、国内の半導体設計、製造、装置、素材メーカーへ集中的に投資してきた。

特に、国内最大のファウンドリである中芯国際集積回路製造(SMICやメモリー大手のYMTC科学技術(YMTC)などが主にな支援対象となっている。新華社通信によると、政府は税制優遇や人材育成策も組み合わせ、産業エコシステム全体の底上げを図っている。

米国の技術規制という高い壁

中国の猛追に対し、米国は安全保障上の懸念を理由に規制を強化している。特に、先端半導体の製造に不可欠なEUV(極端紫外線)露光装置や、高性能な半導体設計ソフトウェア(EDA)の対中輸出を厳しく制限した。

この措置は、中国の半導体産業にとって大きな打撃となった。SMICは7ナノメートル(nm)プロセスの開発に成功したと報じられているが、EUV装置なしでは5nm以下の最先端プロセスへ進むことは極めて困難だ。これにより、中国の技術開発は「成熟プロセス」と呼ばれる旧世代の技術分野に集中せざるを得ない状況となっている。

ファーウェイなど国内企業の突破口

こうした逆境の中、中国企業も独自の打開策を模索している。その筆頭が、米国の制裁で大きな打撃を受けたファーウェイ(ファーウェイ技術)だ。同社は傘下の半導体設計会社ハイシリコンを通じて独自のチップ開発を継続。2023年にはSMICの7nmプロセスを活用したとみられるプロセッサーを搭載したスマートフォンを発売し、技術的な健在ぶりを示した。

ファーウェイの動きは、米国の規制下でも既存の技術を駆使して高性能な製品を開発できる可能性を示唆している。今後、中国は成熟プロセス技術の高度化や、チップレットのような新しい実装技術を組み合わせることで、先端分野での不利を補おうとする動きを加速させるとみられる。

日本の関連性

中国が国家主導で半導体国産化を加速させる動きは、日本の半導体産業に複数の直接的な影響を及ぼす。まず、中国が「大基金」を通じてSMICYMTCに総額3400億元以上を投じていることは、日本の半導体製造装置・材料メーカーにとって、中国市場における競争環境の激化を意味する。特に、中国が成熟プロセス技術の高度化に注力すれば、ディスコや東京エレクトロンといった日本企業が強みを持つエッチング装置や成膜装置の需要は一時的に増加する可能性がある。ただし、これは中国国内メーカーの台頭を招き、長期的には代替品の出現リスクを高める。

次に、ファーウェイがSMICの7nmプロセスを活用したプロセッサーを搭載したスマートフォンを発売した事例は、日本の電子部品メーカーにとって新たなビジネス機会と同時に、サプライチェーンの再編圧力をもたらす。中国が「成熟プロセス」での自給自足を強めることで、日本企業が供給する汎用部品の価格競争が激化する恐れがある。一方で、中国がEUV装置なしでの先端技術開発に限界を感じ、チップレットのような新しい実装技術に活路を見出すならば、日本の後工程装置メーカーや検査装置メーカーには新たな需要が生まれる可能性がある。例えば、レーザーテックのような検査装置メーカーは、複雑化するチップレット構造の検査需要を取り込めるかもしれない。しかし、中国の技術進歩が米国の規制を迂回する形で進む場合、日本企業は米国の輸出管理規制との整合性を常に確認する必要があり、コンプライアンスリスクが増大する。