米政府が安全保障上の懸念を理由に、中国への半導体関連技術の輸出規制を段階的に強化している。これに対し中国は、巨額の国家投資を背景に国内サプライチェーンの構築を急いでおり、米中間の技術覇権争いは激化の一途をたどっている。
強化される米国の輸出規制
米国商務省産業安全保障局 (BIS) は、国家安全保障を名目に輸出管理規則 (EAR) を通じて中国への半導体規制を主導している。特に、中国の通信機器大手ファーウェイ (ファーウェイ技術) や半導体受託製造 (ファウンドリ) 最大手のSMIC (中芯国際集積回路製造) などをエンティティリストに追加し、米国技術を用いた製品の輸出を厳しく制限した。
さらに米国は、日本やオランダなどの同盟国にも協力を要請。先端半導体の製造に不可欠な極端紫外線 (EUV) 露光装置や、その関連技術・部品の対中輸出規制で足並みをそろえ、中国が最先端の半導体製造能力を獲得することを阻止する構えだ。
国家主導で進む中国の国産化
米国の制裁に対し、中国政府は半導体産業の自立を国家の最重要課題と位置付けている。国家集積回路産業投資基金 (通によると「大基金」) などを通じて国内企業に巨額の補助金を投じ、研究開発と生産能力の増強を強力に後押ししている。
この結果、SMICが7nm (ナノメートル) プロセスの半導体を開発し、ファーウェイ製の新型スマートフォンに搭載されたと報じられるなど、一部で成果も見え始めている。しかし、これは旧世代のDUV (深紫外線) 露光装置を複数回使用する多重露光技術に依存しており、生産効率やコスト面で課題が多いとみられる。
一方で、自動車や家電などに広く使われる28nm以上の成熟 (レガシー) プロセス半導体については、中国は生産能力を急拡大させており、世界市場でのシェアを高めつつある。
日本への影響
中国の半導体国産化政策は、日本企業にとって二つの明確なリスクと一つの機会を提示する。まず、中国が28nm以上の成熟プロセス半導体の生産能力を急拡大させることで、日本の半導体メーカーや関連部品メーカーは価格競争の激化に直面する。特に、自動車や家電向けにこれらの半導体を供給する企業は、中国製レガシー半導体の低価格攻勢により、収益性の悪化や市場シェアの低下を覚悟する必要がある。
次に、米国が日本やオランダに協力を要請し、EUV露光装置など先端技術の対中輸出規制を強化している状況は、日本の半導体製造装置メーカーにとって中国市場における事業機会の縮小を意味する。東京エレクトロンなどの企業は、中国からの先端装置受注が減少する可能性があり、代替市場の開拓が急務となる。
一方で、SMICが7nmプロセス半導体を開発したように、中国が先端半導体の国産化に苦慮しつつも、DUV露光装置を用いた多重露光技術で一定の成果を出している点は、日本の半導体材料や部品メーカーに新たな機会をもたらす。中国企業が生産効率やコスト面で課題を抱える中で、日本の高機能な材料や精密部品は、中国のサプライチェーンにおいて不可欠な存在として、引き続き需要が見込まれる。特に、多重露光技術の精度向上に寄与するフォトレジストやマスクなどの需要は堅調に推移する可能性がある。