米国が安全保障を理由に対中半導体規制を強化する中、中国は巨額の国家投資で半導体の国産化を急いでいる。先端分野では米国の制裁が効果を上げている一方、成熟分野では中国企業の存在感が増しており、世界の半導体サプライチェーンは大きな転換点を迎えている。

激化する米国の対中半導体規制

米国政府は、中国の軍事技術近代化を阻止するため、半導体分野で輸出規制を段階的に強化してきた。商務省は、ファーウェイ(ファーウェイ技術)やSMIC中芯国際集積回路製造)といった中国のテクノロジー企業をエンティティ・リストに追加し、米国技術を用いた製品の輸出を厳しく制限している。

さらに、先端半導体の製造装置や関連技術の対中輸出を原則禁止する措置を導入。これにより、中国が14ナノメートル(nm)以降の先端プロセス技術を確立することは極めて困難になったとみられている。これらの規制は、米国内の半導体生産を支援する「CHIPS法」と連動し、中国をサプライチェーンから切り離す狙いがある。

「挙国体制」で臨む中国の対抗策

米国の制裁に対し、中国政府は「科学技術の自立自強」を掲げ、挙国体制で半導体産業の育成を推進している。国家集積回路産業投資基金(通によると「大基金」)などを通じて、国内の半導体設計・製造企業に巨額の資金を投じ、国内での生産能力向上と技術開発を後押ししている。

こうした支援を受け、SMICなどのファウンドリ(半導体受託製造企業)は、規制対象外である28nm以上の成熟(レガシー)プロセスを中心に生産能力を大幅に増強。車載用や家電向けの半導体市場で急速にシェアを拡大している。新華社通信によると、政府は今後も国産化に向けた支援を継続する方針を示している。

日本市場への影響

中国の半導体国産化加速は、日本の産業界に直接的な影響を及ぼす。まず、車載用や家電向け半導体市場における中国企業の台頭は、日本の半導体メーカーや自動車・電機メーカーにとって競争激化を意味する。特に、SMICが28nm以上の成熟プロセスで生産能力を増強している点は、これまで日本企業が強みとしてきた分野での価格競争激化やシェア低下のリスクを高める。

次に、サプライチェーンの分断は、日本企業が中国市場で事業を継続する上で新たな課題を突きつける。ファーウェイのような中国企業が米国技術から切り離されることで、日本企業は部品供給や技術提携において、米国の規制と中国の国産化政策の板挟みになる可能性がある。例えば、日本の半導体製造装置メーカーは、米国の輸出規制により先端技術の対中輸出が制限される一方、中国の「挙国体制」による国産化推進は、将来的に装置需要の減少につながる恐れがある。

最後に、中国が14ナノメートル以降の先端プロセス技術確立に苦戦する一方で、成熟プロセスでの生産拡大を進める戦略は、日本企業にとって新たなビジネスチャンスを生む可能性も秘めている。中国が内製化できない先端半導体分野において、日本の技術力や部品が引き続き必要とされる場面は多く、特定のニッチ市場での連携強化や技術供与の機会を探るべきである。