米国の制裁が強化される中、中国は半導体の国内自給率向上を国家的な最重要課題と位置づけ、巨額の投資を続けている。国内最大手の中芯国際集積回路製造(SMIC)が先端プロセスで一定の成果を上げたとの見方もあるが、製造装置の海外依存という構造的な課題は根深く、真の自立への道は依然として険しい。
激化する米国の対中半導体規制
米国政府は安全保障上の懸念を理由に、中国の半導体産業に対する規制を段階的に強化してきた。商務省はファーウェイ技術(ファーウェイ)やSMICなどを輸出規制リスト(エンティティリスト)に追加し、米国の技術を用いた半導体や製造装置の供給を厳しく制限している。
特に、先端半導体の製造に不可欠な極端紫外線(EUV)露光装置の対中輸出禁止は、中国の技術開発に大きな打撃を与えた。これにより、中国企業が7nm(ナノメートル)以細の最先端プロセス開発を進めることは極めて困難になっている。
国家主導による対抗策と国内の動向
中国政府は米国の規制に対抗するため、「国家集積回路産業投資基金(大基金)」などを通じて国内の半導体企業に巨額の資金を投じ、研究開発と生産能力の増強を後押ししている。その結果、成熟プロセスと呼ばれる28nm以上の半導体では、国内生産能力が着実に拡大している。
カナダの調査会社TechInsightsが2022年に発表した分析によると、SMICは既存のDUV(深紫外線)露光装置を駆使して7nmプロセスによる半導体の出荷を開始したとされ、中国の技術的進歩を示す事例として注目を集めた。しかし、これは限定的な生産にとどまるとの見方が大勢だ。
国産化への道筋と残された課題
中国の半導体国産化における最大の障壁は、依然として製造装置と設計ツール(EDAソフトウェア)の海外依存である。特に前述のEUV露光装置はオランダのASMLが市場を独占しており、中国が独自に開発・製造するには少なくとも数年を要すると専門家は指摘する。
新華社通信は国内の技術開発の進展を報じているが、先端分野での歩留まり率の低さや生産コストの高さといった課題は解決されていない。当面は成熟・レガシープロセスでのシェア拡大を図りつつ、長期的な視点で先端技術のキャッチアップを目指す戦略が続くとみられる。
日本への影響と示唆
中国の半導体国産化への巨額投資は、日本企業にとって二つの明確な機会と一つのリスクを提示する。まず、SMICが既存のDUV露光装置で7nmプロセスを実現したことは、先端プロセス製造装置の輸出規制下でも中国が代替技術で生産能力を確保しようとする強い意志を示す。これは、EUV露光装置のような最先端技術を持たない日本の製造装置メーカーや材料サプライヤーにとって、中国市場におけるDUV関連技術や成熟プロセス向け製品の需要拡大という機会を生む。例えば、東京エレクトロンやSCREENホールディングスのような企業は、中国の国産化推進によって、EUV以外の露光装置や洗浄装置、検査装置の需要増益を享受する可能性がある。
次に、中国が「国家集積回路産業投資基金」を通じて国内企業への投資を加速させていることは、日本の半導体関連企業が中国国内での合弁事業や技術提携を模索する機会を提供する。中国企業は技術的ノウハウやサプライチェーン構築において日本の協力を求める可能性があり、特に材料分野や特定用途向け半導体(例:パワー半導体、車載半導体)において、日本の技術力が評価される余地は大きい。
一方で、中国の国産化推進は、中長期的に日本企業が中国市場で享受してきた優位性を侵食するリスクも孕む。中国政府が「製造装置と設計ツール(EDAソフトウェア)の海外依存」という課題解決に成功すれば、将来的に日本の半導体製造装置や材料の需要が減少する可能性がある。特に、中国が成熟プロセスでの自給率を向上させ、さらに先端技術のキャッチアップに成功した場合、日本企業は新たな市場戦略の構築を迫られるだろう。