中国で、文化政策が地方の活性化に大きく貢献している。2024年には農村の年越しイベント「村晚」が全国で約9万回開催され、延べ約7億人が参加した。デジタル技術と伝統文化を融合させ、住民が主体となることで、新たな観光需要を創出している。
デジタルと伝統が融合する文化イベント
湖南省岳陽市の歴史ある張谷英村では、3Dプロジェクションマッピングで村の四季を映し出す「村晚」が開催された。江蘇省蘇州市では、黒い屋根の遊覧船の上で伝統話芸「評弾」が演じられ、水郷の新たな魅力を伝えた。貴州省のトン族の集落、肇興侗寨では、専門の楽団と地元の歌手が民族音楽や村の歌を共演し、民族間の交流を促進した。
住民が主役の「村舞」コンテスト
中国の公共文化サービスは、質の向上を通じて都市と農村の生活を豊かにすることを目指している。重慶市涪陵区で開催された「村舞(農村舞踊)」コンテストでは、村民が民族衣装などを身にまとい、土地への愛情や豊作の喜びを表現した創作舞踊を披露。観客から大きな拍手が送られた。
経済効果を生む公共文化サービス
中国文化観光部の発表によると、2024年には全国で9万1300回の「村晚」関連イベントが開催され、参加者は延べ6億9200万人に上った。湖南省岳陽市の張谷英村で開催された全国のメインイベントには99万5000人が参加し、5373万元(約11億円)の観光消費を創出したと新華社通信が伝えた。山西省臨汾市の村では、村民による勇壮な太鼓演奏がライブ配信され、最大で数百万人が同時視聴した。
多様な担い手が文化を創造
文化政策は、地域の多様性を尊重し、幅広い層の参加を促している。河南省光山県では、子供たちが主役の児童劇が多数上演された。中央民族楽団は、「山河国楽」と題した社会貢献活動を開始し、無料で民族音楽を指導している。2024年の第20回「群星賞」(大衆文化の最高賞)では、無形文化財の伝承者や民間の芸能人、会社員、学生、退職者など、多様な経歴を持つ人々が創作活動に参加した。
日本にとっての意味
中国の文化政策による地方創生は、日本企業にとって新たな市場機会と競争環境の変化をもたらす。まず、デジタル技術と伝統文化の融合は、日本のアニメ、ゲーム、キャラクターコンテンツの中国地方都市への展開を加速させる可能性がある。例えば、湖南省岳陽市の張谷英村のような歴史ある地域で3Dプロジェクションマッピングが活用されるように、日本のデジタルアートやエンターテインメント技術との連携により、新たな観光体験創出の需要が生まれる。
次に、「村晚」のような大規模イベントが全国で9万回以上開催され、延べ6億9200万人が参加するほどの動員力は、日本の地方創生モデルへの示唆となる。特に、住民参加型で地域固有の文化を掘り起こす手法は、過疎化に悩む日本の地方自治体が、地域資源を活用したインバウンド誘致や国内観光活性化に取り組む際の参考となる。例えば、日本の伝統芸能や祭りをデジタル技術で再構築し、地域住民が主体となるイベントを企画することで、新たな観光消費を喚起できるだろう。
最後に、中国が公共文化サービスを通じて経済効果を創出している点は、日本企業が中国市場で文化関連ビジネスを展開する上で重要だ。山西省臨汾市の村の太鼓演奏がライブ配信で数百万人に視聴された事例は、デジタルプラットフォームを通じた文化コンテンツの収益化モデルを示唆する。日本のコンテンツプロバイダーは、中国の地方文化イベントと連携し、ライブコマースやオンラインチケット販売などのデジタルチャネルを通じて、新たな収益源を確保する機会を探るべきだ。