中国の国家市場監督管理総局は、認知症の人々に配慮した地域社会の構築を推進するため、2つの国家標準を発表した。急速な高齢化を背景に、認知症の人の日常生活における安全性と利便性を高める狙いだ。
居住空間と地域社会の設計基準を策定
今回発表された国家標準は、認知症の人々が頻繁に利用する居住コミュニティと居住空間という2つの主にな生活空間に焦点を当てている。これらの空間設計に体系的な要件を設けるのは初めてとなる。
居住コミュニティに関する標準では、道路、建物、景観、案内標識、付帯施設などの設計規範を定めた。一方、居住空間の標準では、全体的な間取りや共用部の設備に加え、寝室、食堂、居間、浴室といった個別の機能空間に関する具体的な要件を提示している。
国際標準を基に国内基準を具体化
中国政府は、高齢化社会への対応を重要政策と位置づけている。今回の標準策定は、2024年に国内で適用された国際標準を、中国の実情に合わせてさらに詳細化・拡張したものだ。
政府は今後、コミュニティ外の公共空間や商業施設なども含め、認知症の人々を受け入れるための基準開発を進める方針だ。これにより、社会全体で暮らしやすい環境を創出することを目指す、と新華社通信は伝えている。
日本への影響
この中国の国家標準発表は、日本の介護・医療機器メーカー、特にパナソニックやTOTOといった企業に具体的な事業機会をもたらす。中国は急速な高齢化に直面しており、今回の「居住コミュニティ」と「居住空間」における設計規範の策定は、日本企業が培ってきた高齢者向け製品・サービスのノウハウを輸出する絶好の機会となる。
特に、浴室やトイレといった水回り設備に強みを持つTOTOは、認知症患者の安全性と利便性を高めるための手すりや段差解消製品、あるいは特殊な便座といった具体的な要件を満たす製品で優位に立てるだろう。また、パナソニックが提供するスマートホーム技術や見守りシステムは、認知症患者の日常生活をサポートする「付帯施設」や「共用部設備」の要件に合致し、中国市場での需要拡大が見込まれる。
中国政府が「コミュニティ外の公共空間や商業施設」への基準開発を進める方針であることから、今後、日本企業は単なる製品供給に留まらず、中国の都市開発プロジェクトにおけるコンサルティングやシステムインテグレーションといった高付加価値サービス提供も視野に入れるべきだ。この国家標準は、日本企業が中国の巨大な高齢化市場で、単なる模倣品競争ではない、技術とノウハウに基づく競争優位を確立する契機となる。