中国が提唱する「グローバル発展イニシアチブ」に基づき、途上国のデジタル化を支援する構想がラオスやアフリカで具体化している。単なる機材供与に留まらず、人材育成を核に拠えるのが特徴だ。2024年7月にはラオスに科学技術教室が設置されるなど、中国は情報格差の是正と持続可能な発展を掲げ、グローバル・サウスでの影響力を強めている。

ラオス:「科学技術教室」で人材育成を先行

ラオスの首都ビエンチャンにあるピワ中学校では、2024年7月に中国の支援による初の「科学技術教室」が開設された。中国メディアによると、この教室には3Dプリンターやロボット犬、各種科学模型が備えられ、生徒が最先端技術に触れる機会を提供している。このプロジェクトは、2023年に深圳市の国際交流協力基金会や民間企業が同校を訪問したことをきっかけに始まった。機材供与だけでなく、現地の教員が主体的に授業を運営できるよう、中国側のボランティアが操作方法から保守技術まで指導した。

「魚を与えるより釣り方を」 支援方針を転換

一連の取り組みは、物資援助から能力構築(キャパシティビルディング)へと重点を移す、中国の対外支援における方針転換を反映している。復旦大学の姚旭・副研究員は「グローバル・サウスの国々が、単に技術の受容者からデジタル化のルール形成者へと移行するのを後押しすることが重要だ」と指摘する。ラオス・中国協力委員会のサイヤソーン常務副主席も「デジタル化は国家の未来を左右する戦略的な選択だ」と述べ、現地人材が自立的に運営できる仕組みの構築に期待を寄せている。

アフリカ:起業家育成で産業基盤を構築

もう一つの柱が、アフリカにおける起業家育成である。中国の国有複合企業である招商局集団 (China Merchants Group) は、ジブチで青年イノベーション起業家育成プログラム「C Star」を実施。ケニア出身のファッション起業家マカイナ氏もこのプログラムに参加し、中国・深圳のアパレル市場視察やサプライヤー開拓など、具体的なビジネス支援を受けた。同集団がジブチで運営する港湾や自由貿易区が研修生の実践の場となっており、青年層のデジタル活用能力を高め、持続的な経済発展の担い手を育成することを目指す。

日本への影響

中国がラオスやアフリカで展開するデジタル人材育成は、日本の対中戦略に複数の具体的な影響をもたらす。まず、中国の技術標準が途上国に浸透するリスクだ。ラオスの「科学技術教室」に3Dプリンターやロボット犬といった中国製機材が導入され、現地教員が中国ボランティアから指導を受けることで、中国の技術エコシステムへの依存が深まる。これは、将来的にこれらの国々が中国の通信規格やAI技術を採用する可能性を高め、日本企業がインフラ輸出やデジタルサービスで参入する際の障壁となる。

次に、中国が「魚を与えるより釣り方を」と称する能力構築支援は、途上国における日本のブランド力低下を招く恐れがある。これまで日本がODAで培ってきた「顔の見える支援」や「質の高いインフラ」といった評価が、中国の「持続可能な発展」を掲げた人材育成モデルによって相対化される可能性がある。特に、招商局集団がアフリカで実施する「C Star」プログラムのように、ビジネスと結びついた実践的な起業家育成は、日本の技術協力や研修プログラムと比較して、より直接的な経済効果を途上国にもたらすと認識されやすい。

最後に、グローバル・サウスにおける地政学的影響力の変化である。中国がデジタル分野で人材育成を強化することは、単なる経済支援に留まらず、これらの国々の政策決定や国際機関における投票行動にも影響を与えかねない。日本は、中国の動きを注視し、デジタル分野での協力を強化するとともに、独自の強みである質の高い教育や技術移転を再評価し、より戦略的なアプローチを構築する必要がある。