中国の財政部、自然資源部、生態環境部の3省庁はこのほど、生態系保護・修復事業である「山水林田湖草沙(さんすいりんでんこそうさ)一体化保護・修復事業」(以下「山水事業」)の第3弾となる優良事例16件を選定したと発表した。2016年以降、同事業には中央財政から累計1030億元(約2兆1600億円)が拠出されている。

多様な生態系修復の16事例

今回選出された事例は、流域の総合的な管理、砂漠化対策、鉱山の生態系修復、湿地の保全、森林の質的向上、生物多様性の保護など多様な類型を含んでいる。対象地域は14の省(直轄市・自治区を含む)にまたがっており、東部・中部・西部の異なる自然地理的条件下における生態系保護・修復の実践的な知見を示すものだ。

累計1030億元の財政支援

「山水事業」では、優れた事例を選定する審査会が2023年から毎年開催されており、これまでに合計49件の優良事例が選ばれている。これにより、各地方政府が同事業をより質の高い効率的な形で推進するための手本が示された。

財政部によると、2016年以降、中央政府の財政から累計1030億元が拠出され、6回にわたり地方で実施される52件の「山水事業」を支援してきた。「第15次5カ年計画」(2026〜2030年)の期間中も支援は継続され、山頂から海洋までを一体とした保護・管理の枠組みを構築する方針だと、新華社通信は伝えている。

日本への影響

中国が「山水事業」に累計1030億元を拠出し、第3弾で16件の優良事例を選定したことは、日本の環境ビジネス企業にとって具体的な事業機会を生み出す。まず、日本の水処理技術や土壌汚染修復技術を持つ企業は、中国の流域総合管理や鉱山生態系修復といった分野で、技術提供や共同開発の余地がある。特に、中国が「第15次5カ年計画」期間中も支援を継続し、山頂から海洋まで一体とした保護・管理を目指す方針は、広範な環境インフラ需要を示唆する。例えば、日本のIHIや日立造船のような企業は、中国の多岐にわたる生態系修復事業において、そのプラント建設や運用ノウハウを活かせる可能性がある。

次に、中国の環境政策強化は、日本企業のサプライチェーンにおける環境負荷低減への要求を高める。中国に進出している日本企業は、現地での環境規制順守だけでなく、自社の事業活動が中国の生態系保護に貢献するような技術や資材の導入を迫られるだろう。これは、日本の環境技術や製品の輸出を促進する一方で、環境デューデリジェンスの強化を求める。

最後に、中国が「山水事業」を通じて多様な生態系修復事例を蓄積し、地方政府に手本を示すことは、日本の地方自治体や環境NPOとの協力機会を創出する。例えば、日本の特定地域が抱える環境課題に対し、中国の成功事例から学び、共同研究や人材交流を通じて新たな解決策を模索する道も開かれる。これは単なるビジネス機会に留まらず、環境分野における日中間の協力関係深化に繋がる可能性がある。