中国企業の年次報告書シーズンを迎え、経済の複雑な実態が浮き彫りになっている。米国の保護主義を背景に輸出環境が悪化する一方、AIブームがガスタービンなどの分野で特需を生んでいる。しかし、その恩恵は一部に偏り、国内の所得格差を示す「K字回復」が深刻化するなど、中国経済はまだら模様の様相を呈している。

逆風強まる輸出環境とサプライチェーン再編

中国の輸出企業は、かつてなく複雑な経営環境に直面している。2025年にも米国が中国製家電製品に対し大規模な追加関税を課すとの観測が広がる中、特にハイエンド製品を手がける企業はサプライチェーンの再編を迫られている。地域保護主義や非関税障壁の動きも重なり、従来の輸出モデルは岐路に立たされている。さらに、長期化するロシア・ウクライナ紛争や紅海での地政学リスクも、物流コストの上昇や納期の不安定化を招き、企業の収益を圧迫している。

AIブームがもたらす「ガスタービン特需」

その一方で、全く異なる様相を呈している分野もある。AI(人工知能)の普及に伴うデータセンターの建設ラッシュは、電力供給に不可欠なガスタービンの需要を世界的に押し上げている。ガスタービン世界大手3社のデータがその活況を裏付ける。米GEベルノバは2028年までの生産能力がすでに完売し、2029年分も残りはわずか10%だ。独シーメンス・エナジーの2025年販売予測は194基と、2024年のほぼ倍に達する。三菱重工も今後2年で生産能力を倍増させる計画だ。この「需要革命」の核心には、AIの演算能力を支えるデータセンターの爆発的な増加がある。

深刻化する国内格差「K字回復」

こうした産業構造の急激な変化は、中国国内の経済格差をさらに広げる「K字回復」を深刻化させている。この言葉は、一部の産業や富裕層が成長の恩恵を享受して上昇する一方、多くの伝統産業や中間層以下が停滞・低下する二極化の状態を指す。中国証券報によると、AI関連のような新興成長分野が富を生み出す裏側で、輸出環境の悪化に苦しむ製造業や、不動産不況の影響を受ける人々が取り残されつつある。年次報告書から垣間見える好不調のコントラストは、中国社会が直面する構造的な課題を浮き彫りにしており、今後の政策運営の焦点となる。

日本への影響

中国経済の「K字回復」は、日本企業にとって事業戦略の再構築を迫る。特に、米国による追加関税観測やサプライチェーン再編の動きは、中国を生産拠点とする日本企業に直接的な影響を与える。例えば、中国製家電製品への大規模関税が現実となれば、中国で生産し日本や第三国へ輸出する家電メーカーは、生産拠点の多角化や高付加価値化を急がなければ、収益悪化に直面する。

一方で、AIブームによるガスタービン特需は、日本企業に新たな商機をもたらす。三菱重工が今後2年で生産能力を倍増させる計画は、この需要への対応を示している。GEベルノバの2028年までの生産能力が完売し、シーメンス・エナジーの2025年販売予測が194基と倍増する状況は、データセンター建設ラッシュが世界的なガスタービン需要を牽引している証拠だ。日本企業は、ガスタービン本体だけでなく、関連する部品やメンテナンスサービス、さらにはデータセンター向け冷却技術など、AIインフラ関連分野での技術優位性を活かし、中国市場だけでなくグローバル市場での事業拡大を図るべきである。

また、中国国内の所得格差拡大は、日本企業の対中戦略において消費市場の変化を考慮する必要がある。高所得者層向けのハイエンド製品やサービスは引き続き成長が見込める一方、中間層以下の購買力停滞は、大衆向け製品の販売戦略に影響を与える可能性がある。日本企業は、ターゲット層を明確にし、製品ポートフォールドや価格設定を柔軟に見直すことが求められる。