中国で、自動車や家電製品など耐久消費財の買い替えを促す政策が本格化している。上海市は2024年、大規模な設備更新と消費財の買い替えに関する新たな補助金政策を発表。北京や重慶など他の主に都市も追随しており、内需拡大の柱として期待されている。

上海市を皮切りに各都市で導入

上海市では、市の発展改革委員会と財政局が共同で「上海市における2024年の大規模設備更新と消費財買い替え促進に関する通知」を発表した。これを受け、商務委員会など8部門は「2024年上海市自動車買い替え補助金実施細則」を公開し、具体的な支援策を打ち出している。

この動きは上海市にとどまらない。北京市、重慶市、黒竜江省、山西省、貴州省、内モンゴル自治区など多くの地方政府が、消費財の買い替えを促進するための独自の行動計画や新政策を相次いで導入している。中国社会科学院財経戦略研究院の何代欣主任は、こうした地方の積極的な取り組みが消費拡大と質の高い供給の促進に寄与すると評価している。

専門家が指摘する3つの特徴

専門家は、各地方の取り組みには3つの共通した特徴があると指摘する。第一に、国が示す統一的な方針と、各地域の事情に合わせた独自の施策を両立させている点だ。第二に、デジタル製品やスマート製品の購入支援に力を入れていること。第三に、補助金などの対象となる企業の参加基準を明確に設定している点が挙げられる。

蘇州銀行の特別研究員である付一夫氏は、各地域の資源や産業構造の違いを考慮し、国全体の統一性と地域ごとの特殊性を両立させることが重要だと述べる。また、中国デジタル・リアル融合50人フォーラムのシンクタンク専門家、洪勇氏は、参加企業を選定する基準を設けることで、補助金の不正利用といったリスクを防ぐ効果があると分析している。

2023年には2.6兆元の経済効果

中国政府は消費財の買い替え促進策を重視しており、過去にも成果を上げている。中国財政部の最新データによると、2023年における同様の政策に関連した製品の販売額は2兆6000億元(約56兆円)を超え、3億6000万人以上がその恩恵を受けたと新華社通信は伝えた。

北京改革発展研究会の特別研究員、田恵敏氏は「今後、中央政府が買い替え促進策の対象分野をさらに細分化し、地方政府の具体的な実践を指導していくことが予想される」との見方を示した。

日本への影響と今後の展望

中国の消費財買い替え促進策は、日本企業にとって二つの具体的な機会と一つのリスクをもたらす。まず、上海市や北京市といった主要都市がスマート製品の購入支援に注力している点は、日本の家電メーカーや自動車部品メーカーにとって追い風となる。例えば、パナソニックやソニーのような企業は、中国市場で高性能なデジタル家電や車載部品の需要増を見込める。特に、補助金対象となる企業の参加基準が明確化されることで、不正利用のリスクが低減され、健全な競争環境が期待できる。

次に、2023年に2兆6000億元もの経済効果を生んだ実績は、中国市場の潜在的な購買力を示しており、日本企業が中国内需を取り込む好機となる。耐久消費財の買い替え需要が喚起されることで、例えばトヨタ自動車やホンダといった日系自動車メーカーは、新車販売の増加だけでなく、関連するアフターサービスや部品供給のビジネス拡大も期待できる。

一方で、地方政府による政策の多様化は、日本企業にとって新たな課題となる。内モンゴル自治区のような地域固有の産業構造やニーズに対応するためには、画一的な戦略ではなく、地域ごとの特性を深く理解した上で、柔軟な製品開発やマーケティング戦略が不可欠となる。これは、各地方政府の動向を個別に分析し、それに応じたリソース配分を行う必要性を高める。