中国で新エネルギー車(EV、PHEVなど)の普及が加速する一方、使用済み車載バッテリーの急増が新たな社会課題となっている。中国政府はこれに対応するため、回収から再利用までライフサイクル全体を網羅する管理体制の構築を推進。2028年には市場規模が2800億元(約5.8兆円)に達すると予測される巨大市場の健全な発展を目指す。
急増する廃バッテリー、2800億元の巨大市場へ
近年の中国における新エネルギー車市場の急拡大に伴い、使用済み車載バッテリーの廃棄量も急増している。中国の業界団体である中国電子省エネルギー技術協会は、2028年までに中国の車載バッテリー廃棄量が年間400万トンを超え、廃バッテリーの回収・再利用産業の市場規模は2800億元(約5.8兆円)を上回ると予測している。
この急成長市場の秩序ある発展を促すため、政府による規制強化が不可欠となっている。
政府主導でライフサイクル管理体制を構築
中国政府はかねてよりバッテリーリサイクル問題に取り組んできた。2018年には「新エネルギー車車載バッテリー回収・利用管理暫定弁法」を発表。さらに2024年2月の国務院常務会議では、新エネルギー車の車載バッテリー回収・再利用システムの整備に関する行動計画が審議された。
決定打となるのが、2024年4月1日から施行された新たな「新エネルギー車の使用済み車載バッテリーの回収と総合利用に関する暫定管理規則」だ。この規則は、車載バッテリーの生産から廃棄、再利用に至るまでのライフサイクル全体を対象とする管理・監督体制を構築し、廃バッテリーの効率的な回収と総合的な利用を促進することを目的としている。
日本への影響
中国のEV廃バッテリー規制強化は、日本企業にとって機会とリスクを同時にもたらす。まず、日本のバッテリーリサイクル技術を持つ企業には、中国市場への参入機会が生まれる。中国政府が2028年までに400万トン超の廃バッテリー発生を見込み、約5.8兆円の再利用市場創出を目指す中で、高度な選別・処理技術や、希少金属回収技術を持つ企業は、中国企業との合弁や技術提携を通じて、巨大な需要を取り込む可能性がある。例えば、住友金属鉱山やJX金属といった非鉄金属大手は、バッテリーリサイクル技術で先行しており、中国市場での事業拡大を検討する価値がある。
一方で、日本メーカーが中国で生産するEVのコスト増要因となるリスクも存在する。中国政府の規制は、バッテリーの生産から廃棄、再利用に至るライフサイクル全体を対象としており、回収・リサイクル義務がメーカーに課される可能性が高い。これにより、回収・処理費用が製品価格に転嫁され、中国市場でのEV販売競争力に影響を及ぼす恐れがある。特に、中国市場でEV販売を強化するトヨタ自動車や日産自動車などは、この新たなコスト負担を織り込んだ事業戦略の再構築が求められるだろう。
さらに、中国のバッテリーリサイクル技術が急速に向上し、国際競争力が強化される可能性も指摘できる。中国政府の強力な政策支援と巨大な市場規模を背景に、中国企業がバッテリーリサイクル分野で技術革新を進め、将来的に日本を含む他国市場へ進出する脅威も考慮すべきである。