米国による半導体関連の対中輸出規制が強まる中、中国企業は国内での技術開発と並行し、サプライチェーン上流の資源確保を急いでいる。EV(電気自動車)向け車載電池材料大手の浙江華友コバルト(Zhejiang Huayou Cobalt)は、アフリカや東南アジアで資源権益の確保を進め、米国の制裁に対抗する構えだ。
米国の制裁と中国の「資源安全保障」
米国政府は、先端半導体や製造装置の対中輸出を厳しく制限し、中国のハイテク産業の発展を抑制する戦略を推進している。これに対し中国政府は、半導体の国産化を国家目標として掲げる一方、製造業に不可欠な重要鉱物の安定確保を「資源安全保障」の柱と位置づけている。
この戦略の下、政府は企業の海外における資源開発プロジェクトを強力に後押ししている。半導体そのものだけでなく、EVや再生可能エネルギー分野を含む、より広範なハイテク産業のサプライチェーン全体で主導権を握る狙いがある。
華友コバルト、世界で事業拡大
こうした動きを象徴するのが、コバルトやニッケルの精錬で世界有数の華友コバルトだ。同社は、EV向け車載電池の正極材に不可欠なコバルトの世界最大の産地であるコンゴ民主共和国で、鉱山開発や精錬事業への投資を拡大している。
さらに、ニッケルの主に生産国であるインドネシアでも、ニッケル・コバルトの水酸化物混合物(MHP)を生産する大規模プロジェクトを現地企業と共同で推進していると、ロイター通信などが報じている。原料の調達から精錬まで一貫して手掛ける体制を世界各地で構築し、国際市場での影響力を強めている。
日本への影響と今後の展望
浙江華友コバルトによるコンゴ民主共和国やインドネシアでの資源権益拡大は、日本のEV電池サプライチェーンに直接的な影響を与える。第一に、同社がニッケル・コバルトの水酸化物混合物(MHP)生産を拡大することで、日本の電池メーカーは、中国企業が支配する重要鉱物市場での調達競争激化に直面する。現状、日本企業は中国企業との合弁や共同開発を通じて資源を確保するケースが多いが、華友コバルトのような中国企業の垂直統合が進むと、日本企業の調達コスト上昇や安定供給リスクが増大する。
第二に、中国が「資源安全保障」を掲げ、EVや再生可能エネルギー分野を含むハイテク産業のサプライチェーン全体での主導権掌握を目指す戦略は、日本の電池関連技術や素材メーカーの海外展開に影響を及ぼす。例えば、日本の電池素材メーカーがインドネシアなどで新規プロジェクトを立ち上げる際、華友コバルトのような中国企業との競合が激化し、投資回収リスクが高まる可能性がある。
第三に、米国の半導体関連規制が続く中で、中国が重要鉱物の確保を加速させる動きは、将来的にレアアースやリチウムといった他の重要鉱物にも波及する可能性がある。日本企業は、特定の重要鉱物に対する中国への過度な依存を避け、調達先の多角化やリサイクル技術の開発を加速させる必要がある。特に、EV電池の高性能化に不可欠なコバルトやニッケルの安定供給は、日本の自動車産業の競争力維持に直結するため、国家レベルでの戦略的な対応が求められる。