中国の車載電池大手サンオーダ(Sunwoda、Sunwoda(欣旺達))は2024年、吉利汽車(ジーリー)(Geely)グループ傘下のVREMTとの特許侵害訴訟で和解したと発表した。中国メディアの報道によると、サンオーダは和解金として6億800万元(約125億円)を支払う。この一件は、世界最大の新エネルギー車(NEV)市場である中国で、技術開発競争が知的財産紛争に発展する現状を浮き彫りにした。
激化する開発競争と特許紛争
中国のNEV市場は、政府の強力な後押しを受けて急拡大した一方、多数のメーカーが乱立し「消耗戦」と呼ばれるほどの過当競争に陥っている。価格競争だけでなく、航続距離や充電速度を左右する車載電池の性能競争も激化している。それに伴い、バッテリー管理システム(BMS)に使われる半導体技術など、中核技術を巡る特許紛争が頻発している。
今回の訴訟も、そうした背景の中で起きたものだ。VREMTは、サンオーダが自社のバッテリー関連技術の特許を侵害したとして提訴していた。和解に至ったものの、高額な和解金は、中国企業間での知財戦略の重要性が高まっていることを示している。
国産化推進の影で高まる知財リスク
米国による半導体輸出規制を受け、中国政府は半導体や重要部品の国産化を国家戦略として推進している。巨額の補助金が投じられ、多くの企業が研究開発にしのぎを削っている。しかし、技術の急速なキャッチアップを目指す過程で、既存の特許を侵害してしまうリスクは常に存在する。
今回のサンオーダの事例は、国外企業との摩擦だけでなく、国内の競合他社との間でも知財紛争が経営の重大なリスクになり得ることを示唆している。ある業界アナリストは「技術の独自性を確立し、知財ポートフォリオを強化することが、今後の中国ハイテク企業の成長を左右する」と指摘する。
日本への影響と今後の展望
サンオーダが吉利汽車(ジーリー)グループ傘下のVREMTに6億800万元(約125億円)を支払って和解した今回の特許訴訟は、日本企業にとって中国事業における新たなリスクと機会を示唆する。第一に、中国NEV市場の過当競争は、現地企業間の知財紛争を激化させており、日本企業も現地パートナーとの共同開発やライセンス供与において、知財侵害リスクへの厳格な契約とデューデリジェンスが不可欠となる。特に、バッテリー管理システム(BMS)などの基幹技術分野では、中国企業も自社技術の保護を強化しており、安易な技術供与は将来的な訴訟リスクに繋がりかねない。
第二に、中国政府の国産化推進政策は、日本企業にとって二面性を持つ。中国企業が技術のキャッチアップを急ぐ中で、日本企業の持つ既存特許が意図せず侵害される可能性が高まる。これは、日本企業が中国市場で特許侵害訴訟の原告となる機会が増えることを意味する一方、自社の事業展開においても、中国国内の複雑な特許状況を把握し、防御的な知財戦略を講じる必要性を高める。
第三に、今回のサンオーダの事例は、中国企業が自社の技術力を高める過程で、高額な和解金を支払ってでも知財問題を解決しようとする姿勢を示している。これは、日本企業が中国市場で独自の技術や特許を保有していれば、ライセンス収入やクロスライセンス交渉において優位に立てる可能性を示唆する。単なる部品供給に留まらず、日本企業が持つ先進的なバッテリー技術やBMS関連技術を、中国のNEVメーカーにライセンス供与することで、新たな収益源を確保する機会も存在する。