中国の新エネルギー車(NEV)市場は、2023年の各社決算が出揃い、競争激化による「増収減益」の構造と市場の二極化が鮮明になった。政府の強力な普及策を背景に消費者のEVシフトが加速する一方、各社は生き残りをかけた熾烈な価格競争に突入。その結果、多くの企業が売上を伸ばしながらも利益を確保できないという厳しい現実に直面している。
なぜ今、重要か
世界最大の自動車市場である中国の動向は、グローバルな自動車産業の勢力図を塗り替えつつある。今回の「増収減益」という現象は、単なる国内の過当競争に留まらない。ここで勝ち残った企業が、技術力とコスト競争力を武器に海外市場へ本格進出することは確実であり、日本の自動車メーカーや部品サプライヤーにとっても直接的な脅威と機会をもたらすからだ。中国自動車工業協会のデータによると、2023年に4.1%だった自動車業界の販売利益率は、2024年1〜2月には2.9%まで低下しており、市場の消耗戦が数値で裏付けられている。
増収減益の構造、大手も例外なく
中国の主に自動車メーカー13社の2023年決算を分析すると、売上高が前年比で増加したのは77%にあたる10社に上った。特に新興EVメーカーの成長は著しく、Leapmotor(リープモーター)汽車(Leapmotor)が売上高101.3%増、XPeng(シャオペン)汽車(XPeng)が87.7%増、NIO(ニオ)汽車(NIO)が33.1%増を記録した。業界最大手のBYDや、上海汽車集団、吉利汽車(ジーリー)(Geely)、Chery(奇瑞)汽車(Chery)、Great Wall汽車(Great Wall Motor)といった既存大手も軒並み増収を達成した。
しかし、その裏側で収益性は大幅に悪化している。BYD、Great Wall汽車、長安汽車など多くの企業が過去最高の売上を更新しながらも、純利益は減少する「増収減益」に陥った。吉利汽車(ジーリー)やSERES(賽力斯)(SERES)も純利益は微増に留まる。新興勢では、Li Auto(リ・オート)(Li Auto)が年間売上高1000億元を突破したものの、成長率は鈍化。Leapmotor(リープモーター)汽車は通期での黒字化を達成できず、NIOとシャオペンは2023年第4四半期に初の単四半期黒字を記録したものの、通年では依然として巨額の赤字を計上している。
生存戦略:技術投資と海外展開
厳しい収益環境を打開するため、各社は2つの方向で活路を見出そうとしている。一つは技術開発への巨額投資、もう一つは海外市場の開拓だ。競争の軸が単なる価格から、先進運転支援システム(ADAS)やスマートコックピットなどの付加価値へと移行しているためである。
研究開発投資は各社で加速しており、2023年にBYDは630億元(約1.3兆円)以上を投じた。Li Auto(リ・オート)が113億元、NIOが106億元、シャオペンが95億元と、新興勢も売上高の多くを次世代技術開発に振り向けている。この投資が、将来の収益性を左右する重要な鍵となる。
同時にに、海外市場は国内の消耗戦を回避し、「新たな成長の柱」を築くための最重要戦略と位置づけられている。BYDは2023年の海外売上高が3,107億元に達し、総売上高に占める比率は38.7%にまで上昇。Chery(奇瑞)汽車も海外事業が好調で、国内の競争圧力を緩和している。広州汽車集団(GAC)の独自ブランドも海外販売台数が前年比48%増の約13万台を達成するなど、各社がグローバル展開を本格化させている。
技術解説
中国EVメーカーの競争は、主に3つの技術領域で激化している。これらが「増収減益」の背景にあるコスト増と、将来の差別化要因となっている。
- バッテリー技術: コスト競争力の源泉である車載電池では、LFP(リン酸鉄リチウムイオン)電池の採用が主流だ。CATLやBYDといった巨大メーカーの存在により、高品質なLFP電池を低コストで調達できることが中国メーカーの強みとなっている。一方で、高級モデル向けにはエネルギー密度で勝るNMC(三元系)電池も併用されており、航続距離とコストのバランスを取る戦略が求められる。
- 充電アーキテクチャ: 充電時間の短縮を目指し、800V高電圧プラットフォームの採用が急速に進んでいる。シャオペンやLi Auto(リ・オート)などが先行し、わずか10〜15分の充電で300〜500kmの航続距離を確保できる点を訴求。これにより、充電インフラの課題を車両技術で克服しようという動きが活発化している。
- 自動運転・スマート機能: 都市部の複雑な交通環境に対応する高度な運転支援機能(SAEレベル2+3かなり)が差別化の核となっている。多くの新興メーカーは、LiDARを複数個搭載し、NVIDIAやQualcommの高性能SoC(System-on-a-Chip)を採用することで、人間のような自然な運転操作や駐車支援機能を実現。ソフトウェアの継続的なアップデート(OTA)による機能向上も競争の重要な要素だ。
日本企業への示唆
中国の新エネルギー車(NEV)市場は、2023年の各社決算が出揃い、競争激化による「増収減益」の構造と市場の二極化が鮮明になった。BYDやGeely、Chery、Great Wall Motorなどの大手自動車メーカーも売上増ながら利益は減少している。Leapmotor、XPeng、NIOなどの新興EVメーカーは売上高が著しく増加したものの、収益性は大幅に悪化している。中国自動車工業協会のデータによると、2023年に4.1%だった自動車業界の販売利益率は、2024年1〜2月には2.9%まで低下しており、市場の消耗戦が数値で裏付けられている。
日本企業にとって、この動向は直接的な脅威と機会をもたらす。中国の自動車メーカーが技術力とコスト競争力を武器に海外市場へ本格進出することは確実であり、日本の自動車メーカーや部品サプライヤーは競争力を高める必要がある。特に、BYDやGreat Wall Motorなどの大手メーカーが海外売上高を増やしていることから、日本企業は海外市場での競争力を高める必要がある。また、中国の新興EVメーカーが技術開発への巨額投資をしていることから、日本企業は技術開発にも注力する必要がある。
さらに、中国の自動車メーカーが海外市場への進出を進めていることから、日本企業は海外市場でのパートナーシップや協力関係を強化する機会もある。例えば、BYDやCheryなどの中国メーカーが日本の自動車メーカーと提携して海外市場で競争力を高めることができる。日本企業は中国の自動車市場の動向を注視し、海外市場での競争力を高めるための戦略を講じる必要がある。