中国で光ファイバーの市場価格が急騰している。AI(人工知能)の普及を背景としたデータセンター建設が需要を押し上げ、需給バランスが逼迫しているためだ。江蘇中天科学技術(ZTT)の担当者によると、市場では明確な価格上昇が見られるという。
AI需要で光ファイバー市場が活況
G.652.D規格のシングルモード光ファイバー価格は、昨年の低水準だった1コアキロメートルあたり18〜19元から、現在は最高で約50元に達している。データセンター関連需要の急増が生産能力を圧迫しており、供給が追いついていない状況だ。
多くの証券会社の調査リポートは、AI大規模モデルの訓練、AI計算センターの建設、データセンター相互接続(DCI)といった需要の急増が、光ファイバー産業を牽引する新たな原動力になっていると指摘する。天翼デジタルエコノミーシンクタンクの上級研究員である呉婉瑛氏は、「今回の需要の核心はAIデータセンター建設であり、消費量と規格の要求は従来の通信ネットワークをはるかに上回る」と述べた。
供給制約が価格を押し上げ
供給側には硬直的な制約が存在する。光ファイバーの母材であるプリフォームの増産には1年半から2年の期間を要する。加えて、業界が過去の激しい価格競争を経て大規模な増産に踏み切っていなかったため、需給の不均衡が生じている。
国泰君安証券証券の調査リポートによると、単一のAI計算センターにおける光ファイバー需要量は、従来のデータセンターの数倍から10倍以上に達するという。典型的な1万基規模のGPUクラスターでは、サーバー内部の接続だけで数万コアキロメートルの光ファイバーが必要になる。同社は、AIが牽引するデータセンターおよびDCI向けの需要が、光ファイバー需要全体に占める割合は2024年の5%未満から2027年には35%まで急増すると予測している。
世界の過半を占める中国の生産力
工業情報化部(MIIT)情報通信経済専門委員会委員の盤和林氏は、中国の光ファイバーは規模、技術、コスト面で優位性があると指摘。今後2〜3年でAIの計算能力への投資拡大に伴い需要が増加し、さらに6Gネットワークの普及からも恩恵を受けるとの見通しを示した。
実際に、中国の光ファイバー出荷量はすでに世界の過半数を占めている。光ファイバー業界の独立調査機関であるイギリスの商品調査会社CRUのデータによると、2023年の世界の光ファイバー出荷量は6億6200万コアキロメートル(前年比15.3%増)だった。このうち中国の出荷量は3億7200万コアキロメートル(同7.5%増)で、世界全体の56.3%を占めたと、新華社通信は伝えている。
一方で、長飛光繊光纜(YOFC)の証券部門担当者は、今回の価格上昇について冷静な見方を示す。製品モデルによって価格は異なり、単一モデルの価格で全体の動向は判断できないと指摘。国内の通信事業者は主に集中購入で価格を決定するため、市場のスポット価格の変動に完全にには連動しないという。それでも、AIとデータセンターの発展が業界の成長を後押しする傾向は良好だと付け加えた。
日本市場への影響
中国における光ファイバー価格の高騰は、日本企業にとって二つの明確な影響と一つの機会をもたらす。第一に、G.652.D規格のシングルモード光ファイバー価格が昨年の18〜19元から最高約50元へと約2.6倍に急騰したことは、中国市場に光ファイバー製品を供給する古河電気工業やフジクラといった日本企業にとって、収益改善の機会となる。特に、AI計算センター向け需要は従来のデータセンターの数倍から10倍以上と指摘されており、高付加価値製品の販売増が見込める。
第二に、光ファイバーの母材であるプリフォームの増産に1年半から2年を要するという供給制約は、日本企業が中国市場でのシェアを拡大する上で障壁となる。中国の光ファイバー出荷量が世界全体の56.3%を占める現状において、中国国内での供給逼迫は、日本企業が代替供給源となる可能性を示唆する一方で、既存のサプライチェーンに依存する企業にとっては調達コスト上昇のリスクとなる。
最後に、国泰君安証券の予測によれば、AIが牽引するデータセンターおよびDCI向けの需要が2027年には光ファイバー需要全体の35%まで急増する見込みであり、日本のデータセンター関連企業やAIインフラ企業は、高機能光ファイバーの安定調達を確保する必要がある。特に、ZTTやYOFCといった中国大手企業がAI需要を背景に価格交渉力を高める中、日本企業は長期的な供給契約や共同開発を通じて、安定的なサプライチェーンを構築することが喫緊の課題となる。