中国の国土緑化政策が、量の拡大から質の向上へと大きく舵を切った。国家林業草原局のデータによると、従来の「多く植える」段階から、植えた樹木を「適切に管理し育てる」新たな段階へ移行している。これにより、森林の経済的・環境的価値を最大化する狙いだ。

中国の森林面積は36.14億ムー(約2.4億ヘクタール)、森林被覆率は25.09%に達し、森林蓄積量は209.9億立方メートルを突破した。全国の樹木総数は約1426億本で、国民1人あたり100本にかなりする規模となる。

AIが導く「精密林業」

緑化活動は、テクノロジーの活用で「精密林業」へと進化している。中国林業科学研究院資源情報研究所の楊廷栄・副研究員によると、人工知能(AI)技術を活用することで、植樹場所、本数、生育状況を正確に把握し、投資効果の最大化が可能になるという。

この動きは、「第15次五カ年計画」の綱要草案で示された「新たな質の生産力」の発展方針とも合致する。デジタル・スマート技術を全面的に推進し、科学技術イノベーションをグリーン開発に活用する国家戦略の一環と位置づけられている。

経済価値を生む「森林の四つの宝庫」

中国は森林を「貯水池、資金源、食料庫、炭素吸収源」という「四つの宝庫」と位置づけ、その多面的な価値の活用を推進している。2025年には、キノコや山菜といった森林由来の食料生産量が2億4000万トンを超えると予測されている。

現在、全国の林業・草業を合わせた総生産額は約11兆元(約240兆円)に達し、6000万人以上の雇用を創出している。国家林業草原局の覃慶鋒・二級巡視員は、2026年に向けて質の向上、産業振興、国民への利益還元を優先し、国土緑化の空間戦略を最適化する必要があると述べたと、新華社通信は伝えている。

日本への影響と今後の展望

中国の植樹活動DX化は、日本企業にとって新たな市場機会と競争激化の両面をもたらす。まず、AIを活用した「精密林業」への転換は、日本の林業機械メーカーやスマート農業技術企業にとって、中国市場への参入余地を生み出す。特に、生育状況の正確な把握や投資効果の最大化に資するセンサー技術やデータ解析ソリューションは、中国の国家林業草原局が求める「質の緑化」に貢献しうる。

一方で、中国が森林を「四つの宝庫」と位置づけ、2025年には森林由来の食料生産量が2億4000万トンを超えると予測されている点は、日本の食品産業に直接的な影響を与える可能性がある。中国国内でのキノコや山菜といった森林産品の供給力強化は、日本への輸入減少や、逆に中国からの輸出増加を招き、価格競争が激化するリスクをはらむ。

さらに、全国の林業・草業の総生産額が約11兆元に達し、6000万人以上の雇用を創出している現状は、中国が林業を単なる環境政策ではなく、巨大な経済産業として育成していることを示唆する。この巨大市場の成長は、日本の林業関連企業が中国市場で競争力を維持するためには、単なる技術提供に留まらず、中国の「新たな質の生産力」の発展方針に合致するイノベーションを共同で創出するような、より深い協業モデルを模索する必要があることを意味する。