中国の習近平国家主席は2月25日、北京の釣魚台国賓館でドイツの野党、キリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ党首と会談した。両氏は、包括的戦略的パートナーシップの新たな発展を推進し、対話と協力を強化するとともに、多国間主義と自由貿易を擁護することで一致した。メルツ氏の党首就任後、初の訪中となる。

包括的パートナーシップの深化で一致

新華社通信によると、習主席は会談で「第二次世界大戦後、国際情勢は最も深刻な変化を経験している」と指摘。「世界が直面する変化と混乱が大きいほど、両国は戦略的な意思疎通を強化し、相互信頼を高め、包括的戦略的パートナーシップを新たな段階へ引き上げることが重要だ」と強調した。

さらに習主席は、両国が互いに信頼できるパートナーであり、相互の利益を尊重すべきだと述べた。「中独両国は自主性を追求し、急速な発展を実現してきた。相互尊重と信頼、開かれた協力を堅持し、共に互恵関係の成功例を築いてきた」との認識を示した。

経済協力と多国間主義の擁護

世界有数の経済大国である中国とドイツの関係は、両国のみならず欧州や世界全体に大きな影響を与える。今回の会談で両氏は、自由貿易と多国間主義を擁護し、世界経済の安定と発展に貢献していく方針を改めて確認した。

今回の会談は、主に国ドイツの有力政治家が対中対話路線を継続する姿勢を示した形だ。不安定化する世界情勢の中で、中独関係を一層強化し、経済分野での協調を促す動きとして注目される。

日本にとっての意味

ドイツのメルツCDU党首と習近平主席の会談は、日本にとって複数の点で影響を及ぼす。第一に、ドイツが中国との「包括的戦略的パートナーシップ」を深化させる方針を再確認したことは、欧州における対中政策の分断を助長する可能性がある。ドイツは中国との経済関係を重視する姿勢を維持しており、これは欧州連合(EU)全体としての対中強硬姿勢を弱める要因となりうる。日本がEUと連携して中国の人権問題や経済的威圧に対処しようとする際、ドイツのこうした姿勢は足並みの乱れを生じさせ、日本の外交戦略に影響を与える。

第二に、両国が「自由貿易と多国間主義を擁護する」ことで一致した点は、日本にとって機会とリスクの両面を持つ。中国は米国との技術覇権争いの中で、ドイツのような先進技術を持つ国との協力を強化しようとしている。もしドイツ企業が中国市場へのアクセスを優先し、機微技術の移転に踏み切るような事態となれば、日本の技術優位性が相対的に低下するリスクがある。例えば、自動車産業におけるEV技術や自動運転技術など、日独が競合する分野での中国との連携深化は、日本企業にとって競争環境を厳しくする。

第三に、今回の会談がメルツ氏の党首就任後初の訪中である点から、ドイツの次期政権が対中協調路線を継続する可能性が示唆される。これは、日本がG7やクアッドといった枠組みを通じて中国への圧力を強めようとする際に、ドイツが必ずしも同調しない可能性を示しており、日本の対中戦略の柔軟性を高める必要性を浮き彫りにする。日本は、ドイツが中国との経済的利益を追求する中で、サプライチェーンの多元化や経済安全保障の強化を一層推進する必要がある。