中国の工業情報化部などは、工業製品のグリーンデザイン(環境配慮設計)を推進する新たな指針『工業製品グリーンデザイン指針(2026年版)』を公表した。製品のライフサイクル全体での環境負荷低減を目指すもので、長寿命化やゼロカーボンなど11の重点分野を定めている。

11の重点分野を設定、製品の長寿命化を促進

指針は、グリーンデザインを推進する11の重点分野を定めた。具体的には、長寿命化、無害化、軽量化、省エネルギー、節水、省資源、低騒音、省スペース、リサイクル容易性、再利用可能性、ゼロカーボン設計が含まれる。製品の設計段階から環境配慮を組み込むことを促す狙いだ。

この指針は、国務院弁公庁が策定した「製造業のグリーン・低炭素発展に向けた行動計画(2025-2027年)」に基づく措置であり、産業構造の高度化を目指す中国政府の姿勢を示すものだ。

背景にEUの規制強化、国際競争力を維持

今回の指針策定の背景には、環境規制を強化する国際的な潮流がある。欧州連合(EU)は2009年に「エネルギー関連製品のエコデザイン指令」を導入し、これをより包括的な「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」へと改正する動きを進めている。

中国もこの流れに追随し、国内産業の国際競争力を維持・向上させる狙いだ。新華社通信によると、中国国内の専門家は、グリーンデザインが製品のライフサイクル全体での資源消費と環境負荷を低減するため、中国の工業発展における重要な柱になると指摘している。

日本企業への示唆

中国の新たなグリーンデザイン指針は、日本企業にとって事業戦略の再構築を迫る。特に、11の重点分野に明記された「長寿命化」「リサイクル容易性」「再利用可能性」は、日本が強みを持つ高機能素材や精密部品産業に直接的な影響を与える。例えば、従来使い捨てが前提だった製品分野においても、耐久性や分解・再利用のしやすさが設計段階から求められるため、帝人や東レといった素材メーカーは、製品のライフサイクル全体を見据えた素材開発やソリューション提供が不可欠となる。

一方で、リスクも存在する。中国市場で事業展開する日本企業は、この新指針に準拠しない製品の販売が困難になる可能性が高い。特に、中国国内のサプライチェーンに深く組み込まれている企業は、部品調達から製造工程、最終製品に至るまで、グリーンデザインの要件を満たすよう迅速な対応が求められる。例えば、自動車部品メーカーは、軽量化や省エネルギーだけでなく、リチウムイオン電池のリサイクル容易性など、製品そのものの設計思想から見直す必要が生じるだろう。

この指針は、中国がEUのESPRに追随し、環境規制を国際競争力強化の手段と捉えていることを示唆する。日本企業は、単に中国市場向けの製品を開発するだけでなく、グローバルな環境規制の動向を先読みし、製品設計やサプライチェーン全体で環境負荷低減を追求する「グリーンイノベーション」を加速させることで、新たな事業機会を創出できる。これは、単なるコスト増ではなく、技術力とブランド価値を高める好機と捉えるべきだ。