マリオット・インターナショナルなど外資系の大手ホテルチェーンが、中国の地方都市への進出を加速している。これまで北京や上海などの大都市が主戦場だったが、経済成長が著しい地方の富裕層という新たな顧客層の開拓を狙う動きが鮮明になってきた。

大手チェーンが地方へ戦略シフト

ホテル最大手のマリオット・インターナショナルは2024年、中国で新規開業するホテルの30%を、これまで手薄だった三級都市以下の地方都市に集中させる計画を発表した。同社傘下の「フォーポイント・バイ・シェラトン」はすでに、貴州省安順市などで新たに4軒のホテルを開業している。

この動きに追随するように、インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ (IHG) も、地方都市やまだあまり知られていない観光地への展開を加速する方針を明らかにしている。大手チェーンによる地方市場への戦略的なシフトが本格化している。

地方市場の潜在力と競争

中国の地方都市におけるホテル市場の成長は、データにも表れている。中国のホテル業界調査機関である迈点研究院 (Meadin Research Institute) が発表したレポートによると、2024年第1第3四半期に中国国内で新規開業したホテルのうち、三級都市以下に立地するホテルの割合は55.77%に達した。

背景には、地方都市における経済発展と所得向上により、高品質な宿泊施設を求める富裕層やアッパーミドル層が増加していることがある。外資系ホテルは、こうした未開拓の需要を取り込むことで、大都市での激しい競争を避け、新たな成長機会を模索している。今後は、現地の顧客ニーズをいかに的確に捉えたサービスを提供できるかが成功の鍵となる。

日本への影響と示唆

中国の外資系ホテルによる地方都市進出加速は、日本企業にとって複数の影響をもたらす。まず、中国国内旅行市場の構造変化は、日本の観光産業に直接的な競争圧力となる。マリオットが新規開業の30%を地方に集中させ、IHGも追随する背景には、地方富裕層の国内旅行需要の高まりがある。これは、これまで訪日旅行に流れていた中国の富裕層の一部が、国内の高品質な宿泊体験にシフトする可能性を示唆し、日本のインバウンド需要回復に影響を与える。

次に、地方都市における消費行動の変化は、日本製品の新たな販路開拓機会を生む。迈点研究院のレポートが示すように、三級都市以下での新規開業が55.77%に達する背景には、地方の所得向上がある。これらの地域で外資系ホテルが提供する「高品質な宿泊体験」は、日本の高級食材、アメニティ、家具、内装材などの需要を喚起する可能性がある。日本企業は、これらのホテルチェーンやそのサプライヤーとの連携を通じて、これまでリーチしにくかった中国地方都市の富裕層市場への参入を検討すべきだ。

最後に、地方都市のインフラ整備と経済発展は、日本のインフラ関連企業やサービス業にとって新たなビジネスチャンスとなる。外資系ホテルの進出は、周辺の商業施設、交通網、観光インフラの整備を促す。日本の建設・設計会社や、ホテル運営ノウハウを持つ企業は、これらの開発プロジェクトへの参画や、コンサルティングサービス提供の機会を探ることで、中国地方市場でのプレゼンスを確立できる。