Trip.comが利益の88%を独占
オンライン旅行大手トリップドットコム(Trip.com)が2023年11月に発表した第3四半期決算が、中国のホテル業界に衝撃を与えている。同社の同四半期の売上高は183.38億元、純利益は投資収益を含み198.9億元に達した。一方、中国A株に上場するホテル関連企業51社の売上高合計が約839.93億元、純利益合計が約226億元(33社が黒字、18社が赤字)だった。
これは、トリップドットコムが業界全体の約21%の売上高で、純利益の88%を稼ぎ出したことを意味する。同社の好調な業績は、特定の差別化戦略によるものではなく、プラットフォーム大手が市場成長の恩恵を独占する「一人勝ち」の構図が鮮明になった結果だ。
寡占化と二極化が進む市場構造
現在の中国ホテル業界は、市場規模が拡大する一方で、構造的な二極化が進行している。大手ホテルグループへの集中と、消費の高級志向・低価格志向への二極化が、業界再編を加速させている。業界関係者によると、この構造変化が競争のルールそのものを書き換えているという。
プラットフォーム大手の影響力が増大する中、個々のホテルや小規模チェーンは集客を大手OTA(Online Travel Agent)に依存せざるを得ず、価格競争や手数料負担の増大に直面している。市場は、大手資本とプラットフォームが主導する寡占的な構造へと急速に移行している。
過去最高の施設数、成長続く業界
『2024年中国ホテル業発展報告』によると、2023年12月31日時点で、中国の宿泊施設総数は57万軒、客室総数は1927.8万室に達した。このうちホテルは34.87万軒、客室数は1764万室を占め、いずれも過去最高を更新した。市場全体のパイは拡大を続けており、今後も成長が見込まれる。
しかし、その成長の果実は、トリップドットコムのようなプラットフォームや一部の大手ホテルグループに集中する傾向が強まっている。量的拡大から質的競争へとフェーズが移る中で、各社の戦略が問われる局面だ。
日本への影響
Trip.comが中国ホテル市場の利益88%を独占する状況は、日本企業にとって二つの明確な影響と示唆がある。
第一に、中国インバウンド需要への対応戦略の再構築が喫緊の課題となる。Trip.comの2023年第3四半期純利益が198.9億元に達し、中国市場の圧倒的な支配力を示す中、訪日中国人観光客の多くが同プラットフォームを通じて宿泊施設を予約する可能性が高い。日本のホテルや旅館は、自社ウェブサイトや他のOTAに注力するだけでなく、Trip.comとの連携強化や、同社が提供するマーケティングツールへの投資を検討する必要がある。特に、中小規模の宿泊施設は、Trip.comの集客力を活用しなければ、中国市場での競争力を維持することが困難になるだろう。
第二に、日本のOTA市場における寡占化リスクへの警鐘である。中国でTrip.comが「一人勝ち」の構図を築き、プラットフォーム手数料や集客依存度が高まっている現状は、日本のOTA市場でも同様の事態が発生しうることを示唆する。楽天トラベルやじゃらんnetといった国内大手OTAが市場シェアを拡大する中で、日本の宿泊施設は、特定のプラットフォームへの過度な依存を避け、複数のチャネルでの販売戦略を確立する必要がある。また、中国のホテル業界で進む「大手ホテルグループへの集中と、消費の高級志向・低価格志向への二極化」は、日本の宿泊市場でも同様の傾向が見られ、価格競争の激化や手数料負担の増大に繋がる可能性があるため、ビジネスモデルの多様化が求められる。