アクションカメラ大手の中国Insta360(本社:深圳市、中国名:Insta360(影石創新)創新科学技術)は米時間2月26日、米国際貿易委員会(ITC)が同社と米GoProとの特許紛争において、GoPro側の主張の大部分を無効とする最終裁定を下したと発表した。これにより、Insta360は米国での製品販売を継続できる見通しとなった。

GoProの特許6件中5件でInsta360の主張認める

今回の裁定は、GoProがInsta360製品を対象に申し立てた6件の特許侵害に関するものだ。ITCは、GoProが主張した発明特許5件のうち、3件(第10,015,413号、第10,958,840号、第10,529,052号)を無効または部分的に無効と判断。さらに、別の発明特許1件(第10,574,894号)についてはInsta360製品による侵害を認めず、残る1件(第11,336,832号)も無効と認定した。

これにより、発明特許に関するGoProの主張はすべて退けられた形だ。Insta360は、「当社の技術的優位性と独自性が司法判断によっても裏付けられた」との声明を同社ウェブサイトで公表した。

新デザインで外観特許も回避

一方、GoProが主張した外観特許(第D789,435号)1件については、Insta360の製品の一部がその保護範囲に含まれると判断された。しかし、Insta360がこれを受けて提示した新しいデザイン案がITCに認められ、特許を侵害しないことが確定した。

この結果、Insta360は米国で販売している製品について、特許紛争による販売差し止めなどの影響を完全にに回避した。同社は「米国での製品輸入と販売は継続され、事業への大きな影響はない」と強調している。

日本への影響と示唆

今回の米ITCによるInsta360の「実質勝利」は、日本企業にとって二つの具体的な影響と一つの機会をもたらす。

第一に、中国企業の知的財産戦略の巧緻化への警戒が必要だ。Insta360はGoProが主張した発明特許6件中5件を無効化させ、残る1件の外観特許も新デザインで回避した。これは、中国企業が単なる模倣から脱却し、訴訟リスクを事前に織り込んだ製品開発や、係争中の迅速なデザイン変更といった高度な法務・開発戦略を駆使していることを示す。日本企業が中国市場で事業展開する際、自社の特許ポートフォリオを強化するだけでなく、中国企業の特許回避戦略を想定した多角的な防御策が不可欠となる。特に、技術競争が激しいエレクトロニクス分野では、日本のソニーやキヤノンといった企業が同様の知的財産紛争に巻き込まれるリスクが高まる。

第二に、米国市場における中国企業のプレゼンス拡大への対応が求められる。Insta360が米国での製品販売を継続できることで、アクションカメラ市場における中国勢の勢いはさらに加速する。これは、日本のメーカーが米国市場で競争する上で、価格だけでなく、技術革新やブランド戦略で差別化を図る必要性を一層高める。

最後に、中国企業の知的財産戦略を逆手に取る機会も存在する。Insta360が示したように、特許紛争を乗り越えるためのデザイン変更や技術的アプローチは、新たな技術やデザインの創出につながる可能性がある。日本企業は、中国企業との協業や、彼らの知的財産戦略から学び、自社のR&Dや法務戦略に活かすことで、競争優位性を構築できる可能性がある。