春節(旧正月)連休が明け、中国で出稼ぎ労働者のUターンが本格化する中、甘粛省定西市は山東省青島市へ向かう500人超の労働者向けに専用列車を運行した。労働力の安定供給と所得向上を目指す地方政府の計画的な人材支援の一環である。
家族帯同でのUターンを支援、教育問題も解決へ
この専用列車は、春節連休明けに同省から運行される初のUターン専用列車だ。乗客の一人、趙和璧さんは妻と子供と共に乗車した。4年前に青島市で働き始めた趙さんは、出稼ぎ労働者に帯同する子供の就学が保障されていることを知り、翌年から子供を連れてくるようになったという。
趙さんの子供は現在、青島市黄島区の公立小学校に通学している。趙さんは、懸念していた子供の教育問題が解決し、仕事も安定したことで、将来的には家族で同区内に住宅を購入することも視野に入れていると語った。
技能訓練で所得向上、官民連携で就労を支援
地方政府による手厚い支援も労働者の生活を後押ししている。定西市通渭県出身の南万有さんは、10年以上建設現場で働いた後、地元の労働サービス部門が実施する溶接工の無料訓練を受けて資格を取得。その結果、日給が100元(約2000円)以上増えたと話す。
定西市の労働サービス部門責任者、張海軍氏によると、市は近年、企業の需要に基づくオーダーメイド型や特定分野に特化した技能訓練を継続的に実施。2023年には東部・西部地域間労働協力の一環として43の訓練プログラムを実施し、1500人以上を育成した。
また、行政担当者が春節前に各家庭を訪問して就労希望を聞き取り、企業の求人ニーズと結びつける取り組みも進めている。新華社通信によると、こうした官民連携の結果、青島市では2021年以降、累計15万人以上の定西市出身者が安定した職を得ている。
日本への影響と今後の展望
甘粛省の事例は、日本の製造業やサービス業にとって、中国内陸部からの安定した人材供給源としての可能性を示唆する。特に、青島市で15万人以上が安定した職を得ているという事実は、地方政府が主導する計画的な人材移動が、企業の人材確保戦略に組み込めるレベルに達していることを意味する。かつては流動的だった出稼ぎ労働者が、家族帯同や技能訓練を通じて定住化・専門化する傾向は、日本企業が中国で事業展開する上で、より長期的な視点での人材育成や確保を可能にする。
一方で、100元の日給増という具体的な数値が示すように、中国国内の賃金水準は着実に上昇しており、特に熟練工の確保においては、日本企業がこれまで享受してきた「安価な労働力」という優位性が薄れる可能性が高い。これは、日本企業が中国での生産拠点の配置や、人件費を考慮した製品価格設定を見直す必要性に直結する。
さらに、地方政府が「オーダーメイド型」の技能訓練を実施し、企業の求人ニーズと結びつける取り組みは、日本企業が中国で特定の技能を持つ人材を確保する上で、地方政府との連携が不可欠になることを示唆する。例えば、日本の自動車部品メーカーが甘粛省に工場を設立する場合、溶接工や機械加工の専門人材を効率的に育成・確保するために、地方政府との協働で専用の訓練プログラムを開発するといった新たなアプローチが求められるだろう。