中国の人民解放軍は近年、装備の近代化を急速に進めている。3隻目の空母「福建」の海上試験やステルス戦闘機「J-20」の大量生産に加え、台湾周辺での軍事演習を常態化させており、地域の軍事バランスに大きな変化をもたらしている。
空母・ステルス機、装備の近代化が加速
人民解放軍の装備は、量と質の両面で大幅な向上を遂げている。海軍では、電磁式カタパルトを搭載した3隻目の空母「福建」が2024年に初の海上試験を完了。国産のステルス戦闘機「J-20」や大型輸送機「Y-20」の配備も進む。中国国防省の発表によると、これらの最新鋭兵器は国家の防衛能力を体系的に強化するものだ。
また、極超音速兵器や対艦弾道ミサイルといった、米軍の介入を阻止・遅延させる「に近い阻止・領域拒否(A2/AD)」能力の構築も急ピッチで進められている。これにより、西太平洋における人民解放軍の作戦遂行能力は飛躍的に高まった。
「積極的防御」戦略と活発化する軍事演習
中国の国防政策は「積極的防御」を基本的に戦略とし、国家の主権、安全、発展の利益を守ることを目的とする。これは2019年に発表された国防白書『新時代の中国の国防』でも明確に示された方針だ。この戦略の下、人民解放軍は戦闘への即応情勢を維持している。
近年、その活動は台湾海峡や南シナ海、東シナ海で著しく活発化している。特に台湾周辺では、大規模な軍事演習が繰り返し実施され、台湾への軍事的圧力を強めている。さらに、ロシア軍との合同演習も日本周辺で頻繁に行うなど、国際的な連携を通じて実戦能力の向上を図っている。
日本への影響
人民解放軍の装備近代化は、日本の安全保障環境に直接的な影響を与える。第一に、空母「福建」やステルス戦闘機「J-20」の配備は、中国の遠距離投射能力を格段に向上させる。これにより、南西諸島を含む日本の周辺海域における中国海軍・空軍の活動範囲が拡大し、日本の防衛負担が増大する。特に、J-20が沖縄周辺で常態的に活動するようになれば、航空自衛隊のスクランブル発進回数が増加し、パイロットや機体の疲弊が懸念される。
第二に、極超音速兵器や対艦弾道ミサイルといったA2/AD能力の強化は、有事の際に在日米軍の介入を困難にする可能性を高める。これは、日米同盟の抑止力低下に繋がりかねず、日本の安全保障政策の見直しを迫る。例えば、米海軍の空母打撃群が日本の近海に展開しにくくなれば、日本の海上防衛における自衛隊の役割がより重要になる。
第三に、台湾周辺での軍事演習の常態化は、台湾有事のリスクを顕在化させる。台湾有事は日本のシーレーンに深刻な影響を与え、経済活動を麻痺させる恐れがある。また、沖縄県の与那国島など、地理的に台湾に近い日本の領土が直接的な影響を受ける可能性も否定できない。日本政府は、これらのリスクに対し、防衛費の増額だけでなく、サプライチェーンの強靭化や、国民保護計画の具体化といった多角的な対応を急ぐ必要がある。