2020年、中国人民解放軍は新型コロナウイルス対応に当たる一方、台湾海峡での実戦的演習や武器貿易条約(ATT)への加盟など、国内外で軍事活動を活発化させた。習近平国家主席の指示の下、即応体制の強化と国際的な影響力拡大を図る動きが顕著となった一年だった。
習主席の号令とコロナ対応
2020年の年初、1月2日に習近平国家主席は全軍に対し、実戦的な軍事訓練の開始を命じる「開訓動員令」を発令した。同氏による発令は3年連続となる。この号令の下、人民解放軍は年間を通じて練度の向上に努めた。
国内では、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、医療支援活動に積極的に従事した。同年2月2日には、空軍が8機の大型輸送機を動員し、医療支援隊を感染が深刻だった湖北省へ空輸するなど、有事における兵站能力の一端を示した。
台湾海峡での演習と軍備管理への関与
対外的な軍事活動も目立った。9月18日、中国国防省は、人民解放軍が台湾海峡付近で実戦的演習を行ったと発表した。新華社通信などによると、この演習は台湾と外部勢力の挑発に対応するものとされた。
一方、国際的な軍備管理の枠組みへの参加も見られた。6月20日、全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、通常兵器の国際取引を規制する『武器貿易条約(ATT)』への加盟を決定。中国側は、加盟により条約の普遍性を高め、国際的な軍事貿易の秩序維持に貢献するとの立場を表明した。
ロシア主導の国際軍事競技大会に参加
国際協力の分野では、多国間軍事演習への参加を継続した。8月23日から9月5日にかけて、ロシアが主導する「国際軍事競技大会2020」が開催され、中国軍も部隊を派遣した。
この競技大会は、ロシアのほかベラルーシ、アルメニア、アゼルバイジャン、ウズベキスタンでも種目が行われ、人民解放軍は戦車や射撃などの競技に参加し、各国軍との連携や技術交流を図った。
日本の関連性
2020年の人民解放軍の動向は、日本の安全保障と経済に直接的な影響を及ぼす。まず、台湾海峡での実戦的演習は、台湾有事の蓋然性を高めるだけでなく、日本のシーレーン(海上交通路)の安定を脅かす。台湾海峡は日本の原油輸入の約9割が通過する重要航路であり、有事の際にはサプライチェーンが寸断され、エネルギー価格の高騰や製造業の操業停止に繋がりかねない。特に、日本の主要な電子部品メーカーや自動車メーカーは、台湾からの半導体や部品供給に依存しており、このリスクは看過できない。
次に、中国が『武器貿易条約(ATT)』への加盟を決定したことは、国際的な軍備管理への関与を装いつつ、自国の兵器輸出拡大の正当化に利用する可能性を秘めている。中国製兵器の国際市場への流入は、地域の軍事バランスを不安定化させ、特に南シナ海周辺国への影響を通じて、日本の外交・安全保障政策に新たな課題を突きつける。例えば、中国がATT加盟を盾に、東南アジア諸国への武器輸出を加速させれば、日本のODA(政府開発援助)を通じた地域安定化努力が相殺される恐れがある。
最後に、人民解放軍が1月2日に「開訓動員令」を発令し、3年連続で実戦的訓練を強化している事実は、有事即応体制の構築を急ぐ中国の意図を明確に示している。これは、日本の防衛産業にとって、技術革新と防衛装備品の国産化を加速させる喫緊の課題を突きつける。同時に、中国の軍事費増大は、日本の防衛費増額圧力にも繋がり、財政健全化への影響も懸念される。
💬 この記事へのコメント 0
まだコメントはありません
最初のコメントを投稿してみましょう!⚠️ エラーが発生しました