中国が人民解放軍の装備近代化と能力向上を急速に進めている。2024年の国防予算は前年比7.2%増約1兆6700億元(約34兆円)に達し、30年近く続く高い伸びを維持した。新型空母やステルス戦闘機の導入を背景に、その国防政策は周辺国の安全保障環境に大きな影響を与えている。

急速に進む装備の近代化

人民解放軍の装備は、陸海空およびロケット軍の全領域で質的向上を遂げている。海軍では、電磁カタパルトを搭載した3隻目の空母「福建」が海上試験を開始。055型ミサイル駆逐艦などの大型水上艦艇の配備も続く。空軍では、国産の第5世代ステルス戦闘機「J-20」の量産と配備が進むほか、大型輸送機「Y-20」や早期警戒管制機「KJ-500」の能力向上も図られている。

また、米軍のに近いを阻止する「に近い阻止・領域拒否(A2/AD)」能力の中核を担うロケット軍は、極超音速滑空兵器を搭載可能な中距離弾道ミサイル「DF-17」や、対艦弾道ミサイル「DF-21D」など、多様なミサイル戦力を拡充。宇宙やサイバー、電磁波といった新たな領域での作戦能力も強化している。

「積極防衛」を掲げる国防政策

中国の国防政策は「積極防衛」を基本的に戦略としている。これは専守防衛を意味するものではなく、国家の主権や安全、発展の利益が脅かされる場合には、戦略的に攻勢に出ることも含む概念だ。特に、台湾の独立を阻止し統一を達成することは「国家の核心的利益」と位置づけ、武力行使の選択肢を放棄しない姿勢を明確にしている。

この政策の下、人民解放軍は台湾海峡や南シナ海、東シナ海での活動を活発化させている。中国国防省の発表や国営の新華社通信は、これらの活動を「国家主権と領土保全を守るための正当な行動」と繰り返し主張。台湾周辺での大規模な軍事演習を常態化させ、周辺国への圧力を強めているのが現状だ。

日本市場への影響

中国の国防予算が前年比7.2%増の約1兆6700億元に達し、新型空母「福建」やステルス戦闘機「J-20」の配備が進む現状は、日本にとって複数の具体的な影響をもたらす。

第一に、台湾有事のリスク増大だ。中国は台湾を「核心的利益」と位置づけ、武力行使の選択肢を放棄しない姿勢を示している。人民解放軍が台湾周辺での軍事演習を常態化させ、055型ミサイル駆逐艦やDF-17、DF-21Dといったミサイル戦力を拡充していることは、台湾有事の蓋然性を高める。これは日本のシーレーン、特に中東からの原油輸入ルートが集中する南シナ海の航行の自由を脅かし、経済活動に直接的な打撃を与える。

第二に、日本の防衛費増額と防衛産業への影響である。中国の軍備増強に対抗するため、日本は防衛費を増額し、反撃能力の保有を検討している。これは、三菱重工業や川崎重工業などの防衛関連企業にとっては、国内需要の増加という機会となる。しかし同時に、防衛装備品の国際共同開発や輸出を巡る米中間の技術覇権争いに巻き込まれるリスクも高まる。

第三に、サイバー・宇宙領域における安全保障上の課題が深刻化する。中国が宇宙やサイバー、電磁波といった新たな領域での作戦能力を強化していることは、日本の重要インフラや防衛システムへのサイバー攻撃リスクを高める。これは単なる軍事問題に留まらず、日本企業のサプライチェーンや情報システムへの脅威となり、経済安全保障上の対策が喫緊の課題となる。