中国の音楽ストリーミング市場で、ByteDance(ByteDance)傘下のアプリ「汽水音楽」が急速に存在感を高めている。2022年のリリースから約2年で月間アクティブユーザー(MAU)が1.4億人を突破し、業界4位に浮上。親アプリ「Douyin(Douyin(抖音))」からの強力なユーザー誘導を武器に、長年市場を寡占してきたテンセント・ミュージックとNetEaseの2強体制を揺るがし始めた。

成長の鍵はDouyinからのユーザー誘導

「汽水音楽」の急成長を支える最大の要因は、ByteDanceが擁するショート動画プラットフォーム「Douyin」の強力な集客力だ。中国メディアの報道によると、Douyinのおすすめ動画で使われるBGMの多くに「汽水音楽で聴く」というリンクが設置され、ユーザーを直接アプリへと誘導している。実際に、2025年6月時点の「汽水音楽」のMAUのうち、82.1%がDouyin経由のユーザーで占められており、Douyinが極めて重要な流入元となっていることがわかる。

この戦略により、「汽水音楽」は先行するテンセント・ミュージックやNetEase傘下の「NetEase Cloud Music」が築いてきた牙城に食い込んでいる。長らく固定化されていた市場に、新たな競争力学が生まれつつある。

収益化とユーザー定着が今後の課題

現在、「汽水音楽」は無料プランを軸にユーザー基盤を拡大しているが、今後の焦点は収益化だ。同社は有料会員制の導入による収益増を目指している。しかし、業界関係者の間では、無料プランで獲得したユーザーは有料プランへの移行意欲が低い可能性があるとの指摘も出ている。そのため、既存の2強が抱えるコアな有料会員層を奪うまでには至らないとの見方が多い。

一方で、音楽を日常的に深く聴くわけではないライトユーザー層に対しては、Douyinとの連携による手軽さが大きな魅力となる。今後、「汽水音楽」がこれらのライトユーザーをいかに有料サービスへと転換させ、定着させられるかが、持続的な成長の鍵を握ることになるだろう。

日本への影響と今後の展望

ByteDance傘下の「汽水音楽」がMAU1.4億人を突破したことは、日本のコンテンツ産業、特に音楽・エンターテイメント分野に直接的な影響を及ぼす可能性がある。

第一に、Douyin経由でユーザーを誘導する「汽水音楽」の成功は、日本の音楽レーベルやアーティストにとって新たなプロモーションチャネルの可能性を示唆する。Douyinの強力な拡散力は、日本の楽曲が中国市場で認知度を高める上で極めて有効な手段となり得る。実際に「汽水音楽」のMAUの82.1%がDouyin経由であることを踏まえれば、Douyinと連携した音楽配信戦略は、日本のアーティストが中国のライトユーザー層にリーチする上で不可欠となるだろう。

第二に、中国の音楽ストリーミング市場における競争激化は、日本の音楽著作権管理団体や出版社に新たなライセンス交渉の機会をもたらす。テンセント・ミュージックやNetEase Cloud Musicに加え、ByteDanceが加わることで、日本の楽曲に対するライセンス料の引き上げや、より有利な条件での契約締結の余地が生まれる可能性がある。

第三に、無料プランを軸にユーザーを拡大する「汽水音楽」の収益化モデルは、日本の音楽サブスクリプションサービスにも影響を与えうる。中国市場で無料ユーザーから有料ユーザーへの転換が課題となる中、日本のサービスも同様の課題に直面する可能性がある。中国市場での「汽水音楽」の有料化戦略の成否は、日本の音楽配信モデルを再考する上での重要な先行事例となるだろう。