中国の習近平総書記は2024年、天津市を視察した際に、科学技術と産業の革新を同時に推進する必要性を強調した。デジタル経済と実体経済の緊密な融合を促し、製造業の高度化、スマート化、グリーン化を進めるよう指示した。

この方針を受け、天津市は海洋産業の振興に注力しており、同産業は市の質の高い発展を支える重要な原動力となっている。

中国初の海洋油ガス設備スマート工場

渤海湾に面し、北京・天津・河北省に隣接する天津浜海新区は、豊富な海洋資源に恵まれている。この地に、中国初となる海洋石油・ガス設備に特化した「スマート工場」、CNOOCエンジニアリング(海洋石油工程)天津スマート製造拠点が立地する。

同拠点の敷地面積は約57.5万平方メートルで、2期に分けて建設された。1期エリアは2022年6月に、2期エリアは2024年10月にそれぞれ本格稼働した。拠点内には、4つのスマート作業棟、8つの生産支援センター、16カ所の総合組立エリア、大型船が接岸可能な埠頭などを備える。

ここでは主に、海洋石油・ガス掘削プラットフォームや浮体式生産設備、液化天然ガス(LNG)モジュールといった高度な関連設備が製造される。

デジタル技術で生産性を革新

このスマート工場では、5G、産業ビッグデータ、人工知能(AI)などの先端技術を駆使。7つのスマート生産ラインと工場全体のスマート物流ラインを構築し、従来の製造方式と比較して生産効率と作業の安全性を大幅に向上させている。

新華社通信によると、同工場は海洋石油・ガス設備の「大型・大重量・複雑な構造・非標準」という課題を克服するため、国内初となる海洋プラットフォーム統合型スマート製造管理プラットフォームを独自開発した。自動切断機、スマート溶接ロボット、スマート倉庫管理システムなど、600台以上の先進的なスマート生産設備を導入し、デジタル技術と産業技術を融合させることで主に工程のスマート化を実現した。

日本の関連性

CNOOCエンジニアリング天津スマート製造拠点の本格稼働は、日本の海洋産業に直接的な影響を及ぼす可能性がある。同拠点が57.5万平方メートルという広大な敷地で、LNGモジュールを含む高度な海洋設備を製造することは、日本企業がこれまで得意としてきた高付加価値分野での競争激化を意味する。特に、IHIや三菱重工業といった日本の重工業メーカーは、中国市場での受注機会が減少するリスクに直面するだろう。

また、600台以上のスマート生産設備とAI、5Gなどを活用した「国内初となる海洋プラットフォーム統合型スマート製造管理プラットフォーム」の独自開発は、中国が単なる「世界の工場」から、製造プロセスそのもののイノベーションを主導する存在へと変貌していることを示唆する。これは、日本の製造業が、単なる技術供与や合弁事業では競争優位を維持しにくくなることを意味する。

一方で、中国の海洋油ガス開発の加速は、日本のエネルギー安全保障に新たな選択肢をもたらす可能性も秘めている。中国が自国でLNG関連設備を生産し、安定的な供給能力を高めることは、アジア地域全体のLNG市場の安定化に寄与し、ひいては日本のLNG調達におけるリスク分散に繋がるかもしれない。ただし、サプライチェーンの透明性や地政学リスクを考慮した上で、慎重な検討が求められる。