2021年設立の中国のロボット開発企業、跨維智能(Cross-dimensional Intelligence)が急成長を遂げている。物理シミュレーション技術を駆使してロボットの学習データを効率的に生成し、創業わずか3年で売上高1億元(約20億円)を突破。Midea(美的)集団(Midea)やBYDなど大手企業を顧客に抱え、産業用から人型ロボットへと事業を拡大している。
物理シミュレーションでデータ問題を克服
中国のロボット産業が近年、急速な発展を見せている。中でも深圳に拠点を置く跨維智能は、2021年の設立ながら、すでに大手顧客を獲得し、年間売上高は1億元(約20億円)を突破した。
同社の創業者である賈奎氏は、ロボット開発におけるデータ収集の課題を解決するため、物理環境を忠実に再現するシミュレーション技術を開発。これにより、ロボットが実世界での試行錯誤を経ずに大量の訓練データを取得できるようになり、開発効率が飛躍的に向上した。
大手製造業で採用、人手作業の3倍の効率
跨維智能の技術は、Midea(美的)集団(Midea)の工場やハイセンス(Hisense)の生産ラインなど、大手製造業の現場で既に導入されている。Midea(美的)集団の工場では、同社のロボットが仕分け作業を担当し、効率は人手作業の3倍を達成した。
ハイセンスの生産ラインでは、ロボットが柔軟なコネクタ挿抜作業を行い、99.99%という高い成功率を実現している。こうした実績を背景に、同社は2024年に人型ロボットを開発し、2025年には大規模な出荷を開始する計画だ。顧客リストにはBYD、広州汽車集団、中聯重科(Zoomlion)、三一重工(Sany)、パナソニック、ダイキン工業などが名を連ねる。
2027年、サービスロボット市場の本格化を予測
創業者の賈氏は、ロボット産業の将来性を楽観視しており、特にサービスロボットが次の成長分野になるとの見方を示している。技術の成熟とコスト低下が進み、顧客が18〜36カ月で投資回収可能になれば、2027年にも市場が本格的に立ち上がると予測する。
また、2026年には「3D物理世界モデル」が業界の注目テーマになるとも指摘。人間の自然な動作を捉えるリストバンド型やヘッドセット型のデータ収集デバイスが普及し、ロボットの性能向上をさらに加速させると、中国のテクノロジーメディア「36Kr」は報じている。
まとめ:日本への示唆
中国のロボット新興企業、跨維智能の急成長は、日本企業にとって複数の具体的な影響をもたらす。まず、同社が物理シミュレーション技術で効率的なデータ生成を可能にし、Midea集団の工場で人手作業の3倍の効率を達成した事実は、日本の製造業における生産性向上競争を激化させる。特にBYDやパナソニックといった大手顧客を獲得していることから、中国市場における日本の製造業の競争優位性が脅かされる可能性が高い。
次に、跨維智能が2025年に人型ロボットの大規模出荷を計画し、顧客リストにパナソニックやダイキン工業といった日本企業が名を連ねている点は、日本のロボット産業にとって機会と脅威の両面を持つ。これは、日本の大手企業が中国製ロボットを導入することで生産コストを削減し、競争力を高める可能性を示唆する一方で、日本国内のロボットメーカーが中国市場で競争に直面し、技術開発のスピードアップを迫られることを意味する。
最後に、創業者が2027年にサービスロボット市場の本格化を予測し、顧客が18〜36カ月で投資回収可能になる点が鍵となる。これは、日本国内の労働力不足が深刻化する中、サービス分野でのロボット導入が加速する可能性を示唆しており、日本企業は中国の技術動向を注視し、自社のロボット開発や導入戦略を再構築する必要がある。特に「3D物理世界モデル」のような新技術の動向は、日本のロボット産業の将来を左右する可能性を秘めている。