中国・広西チワン族自治区桂林市陽朔県にある屏山村が、マスツーリズムとは一線を画すニッチな体験型観光で人気を集めている。美しい自然環境を活かしつつ、EC(電子商取引)や軍と連携したインフラ整備を組み合わせることで、貧困脱却と地域活性化の新たなモデルを提示している。

体験型観光とECの融合

四方を山に囲まれた屏山村の主力産業は柑橘類の栽培だが、近年は観光業が大きく成長している。村の土壌は健康に良いとされるセレンを豊富に含み、水質も清らかである。この豊かな自然を活かし、いかだ下りや果物狩り、農家レストランでの食事といった体験型観光を提供している。

さらに、デジタル技術の活用も進む。ECを通じて特産の柑橘類を村外へ販売するほか、インターネット上で「田んぼシェアリング」事業を展開。都市部の消費者が小さな区画のオーナーになる制度を導入し、ターゲットを絞った販売モデルを確立した。

軍と地方の連携によるインフラ整備

観光客の誘致には、軍と地方自治体の連携が重要な役割を果たした。協力して駐車場や公衆トイレ、街灯、展望台といったインフラを整備し、観光客の受け入れ体制を強化した。

観光ルートには、旧日本軍に対抗した部隊の跡地を修復し、共産党の革命ゆかりの地を巡る「紅色観光」の要素も取り入れた。中国メディアによると、漓江の美しい景色を様々な角度から楽しめるよう設計されたルートには、観光客が絶えず訪れているという。この取り組みは、貧困脱却支援事業に新たな示唆を与えるものとして注目されている。

日本への影響

屏山村の事例は、日本の地方創生における観光戦略に対し具体的な示唆を与える。第一に、マスツーリズムに依存しない「ニッチな体験型観光」とECの融合は、過疎化に悩む日本の農村地域が特産品販売と観光客誘致を両立させる上で参考になる。例えば、日本の「道の駅」が単なる物販施設に留まらず、屏山村の「田んぼシェアリング」のように、都市住民が地域の農業に継続的に関わる仕組みをデジタルで構築することで、新たな収益源と交流人口の創出が可能となる。

第二に、軍と地方の連携によるインフラ整備は、日本における地域インフラ整備の新たな視点を提供する。中国では「紅色観光」という形で共産党の歴史を観光資源としているが、日本においても自衛隊基地周辺地域や、旧軍事施設跡地を観光資源として活用する際に、インフラ整備における連携モデルを検討する余地がある。例えば、地方自治体と自衛隊が共同で観光ルートの開発や、災害時にも活用可能なインフラ整備を進めることで、地域の活性化と防災機能強化を両立させることが考えられる。

第三に、屏山村が「セレンを豊富に含む土壌」や「清らかな水質」といった地域の固有資源を明確に打ち出し、いかだ下りや果物狩りといった体験に結びつけている点は、日本の地域が持つ独自の自然・文化資源の再評価を促す。日本の地方が持つ多様な地域資源を深掘りし、デジタル技術と組み合わせた体験型観光を開発することで、インバウンド需要の多様化にも対応し、地域経済の持続的な発展に繋がるだろう。