2025年の銅市場は、価格が過去最高値を更新する一方で、供給網の歪みが深刻化している。米連邦準備理事会(FRB)の利下げなどを背景に銅の金融商品としての側面が注目され価格は高騰したが、川中の製錬企業は採算が悪化し、自主減産に追い込まれる事態となっている。
LME銅価格、1万1952ドル超えの最高値
2025年、銅市場は大幅な価格上昇に見舞われ、過去最高値を更新した。LME(ロンドン金属取引所)の銅価格は1トンあたり1万1952ドルを突破し、上海銅先物の中心限月も1トンあたり9万4000元を超えた。
この背景には、FRBによる利下げ観測と実際の利下げが金融市場に影響を与え、銅が金融商品として買われたことがある。データによると、2025年の年初来11カ月でLME銅への投機的な買いポジションは増加。中国のA株市場でも銅関連銘柄が注目され、セクター全体の年間上昇率は7%を超えた。紫金鉱業や洛陽モリブデンなどの大手企業の株価は2倍に上昇した。
製錬マージン悪化、中国で自主減産の動き
一方で、銅産業の実態は原材料価格の高騰により大きな課題に直面している。上海証券報によると、サプライチェーン関連企業は、米国の関税政策の不透明感、市場間の価格差の変動、銅精鉱の供給制約といった多重の圧力にさらされている。
国金先物のシニア銅アナリスト、王建超氏は「海外の鉱山会社が銅価格上昇の恩恵を受ける一方、製錬工程では、鉱山権益を持つ企業への影響は比較的小さいが、外部から銅鉱石を調達する比率が高い企業は大きな影響を受けている」と指摘する。銅精鉱の加工マージン(TC/RC)は2025年2月初旬にマイナス圏に突入し、5月以降は1トンあたりマイナス40ドルの低水準で推移。王氏は「製錬所は通常の加工利益を確保できず、むしろ鉱山会社に費用を支払う逆ザヤ状態にあり、収益が大幅に圧迫されている」と述べる。これを受け、中国の大手製錬所で構成されるグループは、2026年に10%の協調減産を決定した。
アナリストの張遠氏は、こうした採算悪化に伴う自主減産は個別の事象ではないと分析。銅鉱山の生産量減少、TC/RCの低迷、製錬所の損失拡大という連鎖が、2026年の世界の銅生産量の伸びを鈍化させると予測している。
米国の戦略備蓄が招く「地域的ミスマッチ」
川上の原料部門からの圧力は、川下の加工企業にも波及している。サプライチェーンの混乱や鉱石供給の逼迫は、国内製錬企業の原料調達を困難にし、電線や電子部品などを製造する加工企業のコスト圧力を高めている。
「価格の変動と、産業内での明暗の分離」が2025年の銅市場の実態を最もよく表している。現在の銅不足は、全体量の不足というより構造的な問題だ。王氏は「2025年の世界銅市場で最も顕著な歪みは、資源の地域的な配分における著しいミスマッチだ」と分析する。米国が通商拡大法232条に基づき銅輸入品への追加関税を検討していることが、国内での戦略的な在庫積み増しを促進。この動きが価格の安定装置として機能せず、むしろ価格の歪みを助長している。その結果、アジアや欧州市場では在庫が減少し、供給不安に対して極めて脆弱な状況となっている。
日本への影響と示唆
2025年の銅市場で顕在化した価格高騰と製錬マージンの悪化は、日本の製造業に直接的な影響を及ぼす。LME銅価格が1トンあたり1万1952ドルを超え、中国の製錬所が10%の協調減産に踏み切る状況は、日本の電線メーカーや自動車部品メーカーにとって、原材料コストの大幅な上昇と調達の不安定化を意味する。例えば、三菱マテリアルやJX金属といった非鉄金属大手は、銅精鉱の加工マージンが1トンあたりマイナス40ドルという逆ザヤ状態に直面するリスクがあり、収益悪化や生産調整を迫られる可能性がある。
特に、米国の戦略備蓄による地域的な需給ミスマッチは、アジア市場での銅供給をさらに逼迫させる。日本企業は、中国からの銅製品輸入に依存する部分も大きく、中国の製錬所減産はサプライチェーンの寸断リスクを高める。このため、日本の製造業は、銅の安定調達に向けた複数国からの調達先の確保や、代替素材への転換、あるいは製品設計の見直しといった抜本的な対策が喫緊の課題となる。また、銅価格の金融商品化が進む中で、価格変動リスクをヘッジする戦略の強化も不可欠となるだろう。
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