AIデータセンターが直面する帯域幅の拡大と電力消費の増大という課題の解決策として、光半導体と電子回路を一体化した「CPO(Co-Packaged Optics)」技術が注目されている。サプライヤー各社は次世代の標準と位置付けるが、技術的な成熟度や運用リスクを理由に導入には慎重な見方も多い。専門家からは、本格的な普及には10年を要する可能性が指摘されている。

AIが後押しするCPOへの期待

CPOは、光インターフェースをスイッチなどの半導体チップ(ASIC)に極めて近い距離で実装する技術だ。もともと様々な用途が模索されていたが、AIの爆発的な普及がその必要性を決定づけた。AIモデルの巨大化に伴いデータセンター内の通信量が急増し、スイッチASICが 51.2T(テラビット/秒)102.4T といった超高速領域に突入する中、従来の銅線による電気配線では信号損失と消費電力が限界に達しつつある。CPOは、電気信号が移動する距離を最小限に抑えることでエネルギー効率を劇的に高め、高密度の帯域幅を実現する解決策として大きな期待が寄せられている。

普及を阻む「3つの壁」

しかし、CPOの普及には少なくとも3つの大きな壁が存在する。第一に「技術・運用の壁」だ。従来のプラガブル(抜き差し可能)な光学部品と異なり、CPOは基板に直接実装されるため、故障時の交換が極めて困難になる。現場の技術者からは「運用上の悪夢になりかねない」との懸念も聞かれる。第二に「コストの壁」だ。初期のCPO搭載スイッチは、実績のある従来製品よりも高価になる可能性が高い。そして第三に「心理的な壁」である。特に超大規模データセンター事業者(ハイパースケーラー)以外の一般企業ではCPOへの理解がまだ浅く、未知の技術に対するリスクを敬遠する傾向が強い。

ハイパースケーラーが先行、一般普及は道半ば

こうした中、CPOの導入を積極的に進めるのが、マイクロソフト、メタ、グーグル、アマゾンといったハイパースケーラーだ。彼らにとって、将来のデータセンターにおける消費電力の抑制は至上命題であり、CPOは単なる部品更新ではなく、次世代AIインフラを支える不可欠なアーキテクチャ転換と位置づけられている。すでに各社は内部での検証を進めており、実用化に向けた動きを加速させている。一方で、一般のデータセンター市場への普及はまだ道半ばだ。技術が成熟し、コストが低下、そして運用ノウハウが確立されるまでには、今後10年近い時間が必要になるとみられる。

日本への影響

AIデータセンター向けCPOの本格普及に10年を要するとの見方は、日本企業にとって二つの明確な機会と一つのリスクを示す。

まず機会として、CPOは電気信号の移動距離を最小化し、51.2Tや102.4Tといった超高速通信における電力効率を劇的に高めるため、データセンターの省エネ化に貢献する。これは、電力価格の高騰やカーボンニュートラルへの要求が高まる日本において、データセンター運用コスト削減と環境負荷低減を両立させるソリューションとして、日本電信電話(NTT)やソフトバンクといった通信事業者、あるいは自社データセンターを持つ大手企業にとって導入価値が高い。特に、ハイパースケーラーが先行導入し技術検証が進むことで、日本企業は成熟した技術を導入できる利点がある。

次に、CPOの「技術・運用の壁」は、新たな保守・運用サービス市場を創出する。CPOは基板に直接実装されるため、故障時の交換が困難という課題がある。これは、精密機器の保守・運用に強みを持つ日本企業、例えば日立製作所や富士通が、CPO搭載機器の専門的な診断・修理サービスや、遠隔監視・予兆保全システムを提供することで、新たな収益源を確立できる可能性を示唆する。

一方でリスクは、CPO技術がまだ黎明期にあり、ハイパースケーラー以外の一般企業への普及には10年を要するとの見方から、関連投資のタイミングを誤る可能性がある。日本企業がCPO関連の設備投資や技術開発を急ぎすぎると、市場の成熟を待つ間に陳腐化リスクや過剰投資のリスクに直面する可能性がある。