中国の国家安全部はこのほど、SNSなどで利用者に接近する「宝藏網友」(お宝ネット民)と呼ばれる存在が、国家の安全保障を脅かすと警告したした。当局は、これらのアカウントがスパイ活動や機密情報の窃取を目的としている可能性があるとして、国民に注意を呼びかけている。

SNSに潜む新たな脅威

「宝藏網友」は、直訳すると「宝のネットユーザー」を意味する中国のネットスラングだ。しかし、国家安全部が指摘するのは、一見すると有益な情報や魅力的な人物像を装いながら、実際には国家の敵対勢力が運営する偽アカウントの危険性である。同部が公式SNSアカウントで発表した内容によると、これらのアカウントは国家の安全を脅かす罠だという。

これらのアカウントは、SNS上でユーザーと交流を深め、信頼関係を構築することから始める。その過程で、相手の職業や社会的地位、人間関係といった個人情報を巧みに収集していく。最終的な目的は、特定の分野の専門家や政府・軍関係者などから機密情報を引き出すことにあるとみられる。

巧妙化する勧誘の手口

勧誘の手口は巧妙化している。「金儲けの方法」や「高給のアルバイト」といった経済的な利益をちらつかせるだけでなく、恋愛感情を利用するケースや、学術調査、ビジネス相談を装って専門家に接触する事例も報告されている。無害なやり取りから始めて徐々に相手の警戒心を解き、重要な情報を引き出すのが常套手段だ。

国家安全部は、こうしたアカウントが背後で組織的に活動している可能性を指摘。SNSが国境を越えたスパイ活動の温床になっているとの危機感を示している。同部は、不審なアカウントからの接触には細心の注意を払うよう国民に強く求めている。

当局が呼びかける対策

この脅威に対し、国家安全部は具体的な対策を呼びかけている。まず、オンラインで知り合った見知らぬ相手を安易に信用せず、個人情報、特に職務に関する機密情報を不用意に明かさないことが重要だ。また、少しでも不審に感じた場合は、直ちに関係を断ち、当局に通報することを推奨している。

技術的な自衛策として、強力なパスワードの設定や二要素認証の活用、使用しているソフトウェアを常に最新の状態に保つといった基本的に的なサイバーセキュリティ対策の徹底も改めて強調した。SNSプラットフォーム事業者にも、不審なアカウントの監視と削除を強化するよう求めているとみられる。

まとめ:日本への示唆

中国国家安全部が「宝藏網友」と称するSNS経由のスパイ活動に警鐘を鳴らしたことは、日本企業にとって看過できないリスクと機会を提示する。まず、中国市場で事業展開する日本企業は、従業員に対する情報セキュリティ教育を強化する必要がある。特に、中国のSNSプラットフォームを利用する従業員が「金儲けの方法」や「高給のアルバイト」といった経済的誘因、あるいは「ビジネス相談」を装った接触を通じて、企業の機密情報や個人情報を漏洩させないよう、具体的な事例を交えた研修が不可欠となる。

次に、この警告は、日本企業が中国におけるサプライチェーンのレジリエンスを再評価する契機となる。中国国内の企業や個人がスパイ活動の標的となることで、サプライチェーン上の情報漏洩リスクが高まる可能性がある。例えば、中国の提携企業が持つ技術情報や顧客データが外部に流出し、それが日本企業の競争力に影響を及ぼす事態も想定される。したがって、契約内容の見直しや、情報管理体制の監査を強化することが求められる。

最後に、中国当局が「強力なパスワードの設定」や「二要素認証の活用」といった基本的なサイバーセキュリティ対策を国民に呼びかけている点は、日本企業が中国市場でサイバーセキュリティ関連サービスを提供する機会を示唆する。中国企業や個人がセキュリティ意識を高める中で、日本の高度なセキュリティ技術やソリューションに対する需要が増加する可能性がある。これは、日本のIT企業が中国市場で新たなビジネスチャンスを掴む機会となり得る。