中国の複合企業、東陽光(ドンヤング)が、巨額のAI演演算能力サービス契約を締結したと発表し、市場の注目を集めている。同社はデータセンター大手「秦淮データ」を280億元(約6000億円)で買収すると発表したばかりで、今回の契約はそれに続く大型案件となる。しかし、契約内容の不透明性や資金調達への懸念から、市場では期待と同時にに疑問の声も上がっている。
巨額契約と株価の急騰
東陽光の発表によると、子会社の東莞東陽光雲智算科学技術有限公司が、匿名企業A社と最大190億元(約4000億円)規模の演演算能力サービス供給契約を締結した。契約期間は、受注から検収完了後60ヶ月間とされている。同社は、この契約が演演算能力事業の安定した長期収益源となり、AI演算サービス分野での競争力強化に繋がると強調している。この発表を受け、東陽光の株価は2日連続でストップ高を記録し、時価総額は一時1289億元(約2兆7000億円)に達した。同社の実質的な支配者である張寓帥(ジャン・ユーシュアイ)氏とその母親は、2026年版の胡潤世界富豪ランキングで440億元(約9300億円)の資産を保有し、「東莞の富豪」として知られている。
市場が抱く三つの疑問点
今回の巨額契約に対し、市場からは主に三つの疑問が呈されている。第一に、組織構造の不透明性だ。東陽光の関連会社が秦淮データという実績ある演演算能力資産を買収したばかりにもかかわらず、実績のない子会社が匿名企業A社との巨額契約を担う点に疑念が持たれている。第二に、資金繰りの懸念。東陽光は負債比率が66%を超え、利益率も低い中で、数十億元規模のサーバー購入費用を全額立て替える必要があり、回収期間も5年と長期にわたる。資金調達が滞れば、顧客が契約を解除するリスクがある。第三に、契約条件の厳しさだ。契約では、東陽光側がすべてのリスクを負い、わずかな不履行でも20%の高額な違約金を支払う義務がある一方、A社には保証金や前払い金がなく、契約解除のコストが極めて低いと指摘されている。
東陽光の反論と今後の見通し
東陽光は、これらの疑問に対し、契約はすでに発効しており、過去の類似事例とは比較できないと反論している。秦淮データ買収と今回の契約に必要な資金については、自己資金、金融機関からの融資、株式市場での資金調達など、複数の方法で確保する計画だと説明した。また、匿名企業A社については、商業上の秘密維持契約により詳細を非公開としているが、厳格なデューデリジェンスを実施し、相手企業の信用力と履行能力を確認済みであると強調している。契約内容によれば、東陽光は高性能サーバーの調達・設置・運用保守を担い、A社は月額で演演算能力サービス料を支払う。しかし、性能基準を満たさない場合はA社が一方的に契約を解除できる条項も含まれている。今後の焦点は、東陽光が安定した資金調達を実現し、契約を確実に履行できるか、そして匿名企業A社の実態が明らかになるかにある。日本企業が中国のAI市場に参入する上でも、このような不透明な契約形態には注意が必要だ。