AIで睡眠の質を高めるシステムを開発する米国の新興企業Eight Sleepは、中国市場への本格参入を発表した。4月に広東省深圳(しんせん)市で新製品「Pod 5」を発表し、価格は1万9999元(約40万円)から。累計売上高5億ドル、利用者100万人超の実績を背景に、中国の高機能寝具市場の開拓を目指す。

新製品「Pod 5」投入、年間利用料を免除

Eight Sleepは4月、広東省深圳市の旗艦店「INNO100」で、スマート快眠システム「Pod 5」を正式に発表した。価格は1万9999元(約40万円)からで、WeChatのミニアプリや、JD.com(京東)集団(JD.com)、Tmall(天猫)(Tmall)といったECサイトで販売する。

中国市場の開拓にあたり、同社は通常、米国などで課しているソフトウェアの年間199ドルの利用料を免除する措置を打ち出した。巨大な潜在顧客層を持つ中国市場を重視する戦略の表れだ。

創業期から中国と連携、マスク氏ら著名人も愛用

同社と中国との関わりは深い。CTO(最高技術責任者)のマッシモ・バッシ氏によると、2015年の創業期、初期製品の開発段階から深圳や恵州(けいしゅう)の工場と連携してきたという。当初数人だったチームは現在、世界で数百人規模に拡大した。

Eight Sleepの製品は、テスラのイーロン・マスクCEOやメタのマーク・ザッカーバーグCEO、F1ドライバーのシャルル・ルクレール選手といった著名人も愛用している。累計売上高は5億ドル、利用者数は100万人を突破した。

CTO「中国は巨大市場、体験向上が鍵」

バッシCTOは中国市場参入の理由について「中国は非常にに大きな市場であり、ユーザー体験の向上が重要だ」と述べた。同社は参入に先立ち、この1年で中国チームを15人から45人に増員したという。

インフラ基盤の整備、アプリケーションの現地語対応、機械学習アルゴリズムの改良などを進めてきたと説明した。

結論:日本への示唆

米Eight Sleepの中国市場参入は、日本企業にとって二つの明確な示唆を与える。

第一に、高価格帯のスマートヘルスケア製品における中国市場の可能性だ。Eight Sleepの「Pod 5」が1万9999元(約40万円)という高価格にもかかわらず、年間利用料免除という異例の戦略で巨大市場を開拓しようとしている事実は、中国富裕層や中間層における健康投資意欲の高さを示唆する。日本の健康機器メーカーやサービス提供企業は、単なる機能提供に留まらず、AIを活用したパーソナライズされた「快眠システム」のような付加価値の高いソリューションを、高価格帯で展開する余地がある。特に、高齢化が進む日本国内市場で培ったノウハウは、中国の富裕層向けに転用できる可能性がある。

第二に、中国サプライチェーンとの連携深化の重要性だ。Eight Sleepが2015年の創業期から深圳や恵州の工場と連携し、初期製品開発を行ってきた経緯は、中国の製造業が単なる生産拠点ではなく、R&Dやイノベーションのパートナーとなり得ることを示す。日本のスタートアップや中小企業は、中国の製造能力を単なるコスト削減の手段として捉えるのではなく、Eight Sleepのように製品開発の初期段階から協業することで、迅速なプロトタイピングや量産化、さらには技術革新の加速を図れる。特に、AIやIoTといった先端技術を搭載する製品開発においては、中国のサプライチェーンが持つ柔軟性とスピードは、競争優位性を確立する上で不可欠となりつつある。