中国の国家市場監督管理総局が、国内の太陽光発電業界で深刻化する過当競争の是正に乗り出した。低価格競争による収益悪化や技術停滞を問題視し、価格競争から技術革新を軸とした価値創造への転換を促す。2026年から始まる「第15次5カ年計画」の重要課題と位置づけられている。

過当競争に陥る太陽光発電業界

中国の太陽光発電業界では、低品質・低価格競争や同質化した設備の重複投資といった過当競争が横行し、企業は軒並み収益確保が困難な状況に直面している。市場の資源配分が歪み、企業の技術革新や製品の高度化への投資意欲が削がれているのが現状だ。

中国太陽光発電業界協会のデータによると、2025年以降、太陽光発電のサプライチェーン全体の価格は大きく変動した。特にセル、モジュール、シリコンウエハーの価格は2025年6月に底を打ち、業界企業の多くが赤字に陥ったと新華社通信は伝えている。こうした価格競争は、企業から研究開発の余力を奪い、製品品質の低下を招きかねない。

技術革新への転換が急務

中国太陽光発電業界協会の王勃華・名誉理事長は「『消耗戦』さながらの悪質な競争を是正しなければ、国内の統一市場の構築や内需喚起は困難となり、複雑化する国際情勢への対応も難しくなる」と警鐘を鳴らす。過当競争の是正は、技術革新を軸に、価格競争から価値創造へと転換を目指す必要がある。

技術革新を伴わない是正策は実効性がなく、技術によって付加価値を高めない限り、業界は低価格競争の泥沼から抜け出せない。業界標準と製品品質を引き上げることで、競争の焦点を低価格から高価値へと転換させることが求められる。企業は長期的な視点に立ち、独自の技術革新を追求する必要がある。

逆淘汰を避けた精密な調整

当局は、過当競争の是正が単純な「生産能力の制限」や「規模の抑制」ではないと強調する。一律の規制は、先進的な生産能力の成長を妨げ、むしろ時代遅れの生産能力を温存させる「逆淘汰」のリスクを招く恐れがあるためだ。

中国の太陽光発電産業は、シリコン原料、シリコンウエハー、セル、モジュール、応用システムに至るまで完全になサプライチェーンを形成している。各工程の技術成熟度や競争環境は大きく異なるため、科学的な分析に基づき、工程別の精密な調整が不可欠となる。

日本への影響と今後の展望

中国の太陽光発電業界における国家主導の価格統制と技術革新への転換は、日本の関連産業に複数の影響を与える。まず、中国市場における太陽光発電モジュールやシリコンウエハーの価格が、2025年6月の底値から安定化に向かう可能性があり、これは中国からの安価な製品流入に苦しんできた日本の太陽光発電関連企業にとって、競争環境の改善につながる。特に、中国製部品に依存する日本のシステムインテグレーターや施工業者にとっては、サプライチェーンの安定化と品質向上が期待できる。

一方で、中国が「技術革新を軸とした価値創造」に舵を切ることは、日本の技術優位性に対する新たな脅威となる。例えば、日本の太陽電池メーカーであるカネカやシャープが持つ高効率技術は、中国が研究開発投資を加速させることで、急速に追いつかれるリスクがある。特に、中国が「第15次5カ年計画」で技術革新を重視する姿勢は、長期的な競争力に影響を与える。

さらに、中国当局が「逆淘汰」を避け、精密な調整を目指す方針は、日本の企業が中国市場で事業を展開する際に、より高度な技術や付加価値が求められることを意味する。単なる価格競争では立ち行かなくなり、独自の技術やソリューションを持つ企業だけが生き残れる市場へと変貌する可能性がある。これは、日本の高機能材料メーカーや精密機器メーカーにとっては、新たなビジネスチャンスとなり得る。