2026年の世界経済は地政学的・経済的情勢の不透明感を増しており、安全資産とされる金(ゴールド)が再び投資家の注目を集めている。金価格は変動を続けているが、市場ではその将来性について議論が活発化している。
専門家が指摘する価格のけん引役
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の米州担当CEO兼グローバルリサーチ責任者であるフアン・カルロス・アルティガス氏は、2026年の金市場の主なけん引役について解説した。同氏によると、金市場は中央銀行による購入とリスク回避センチメントの高まりに後押しされる「構造的変化」の最中にあり、資産配分において不可欠な安全資産としての地位を確立しているという。
4つの価格決定要因とリスク
アルティガス氏は、金価格は主に「景気拡大」「リスクと不確実性」「機会費用」「市場のモメンタム」の4要因で決まると指摘する。現在のマクロ環境下では、特にリスクと不確実性の増大が価格を押し上げる最大の要因となっている。地政学的緊張や金融市場のストレスが高まる局面では、金のような質の高い安全資産への需要が一段と強まる傾向にあると、同氏は分析している。
日本市場への影響
2026年の金市場における地政学リスクの高まりは、日本企業にとって直接的なコスト増と投資戦略の見直しを迫る。特に、WGCのフアン・カルロス・アルティガス氏が指摘する「中央銀行による購入」と「リスク回避センチメントの高まり」が金価格を押し上げる「構造的変化」は、日本企業のサプライチェーンにおける原材料調達コストに影響を及ぼす可能性がある。例えば、電子部品や自動車部品に使用される金メッキのコスト上昇は、製造業の利益率を圧迫しかねない。
また、地政学的緊張が安全資産としての金への需要を増幅させることで、円安の進行と相まって輸入物価の上昇を加速させるリスクがある。これは、エネルギーや食料品など、輸入依存度の高い日本経済全体にインフレ圧力をもたらし、家計の購買力低下や企業のコスト増に繋がる。
一方で、金価格上昇は、日本企業が保有する金関連資産の評価益に繋がる機会も提供する。商社や貴金属を扱う企業は、この構造的変化を収益機会と捉え、ポートフォリオ戦略を見直す余地がある。しかし、金価格の変動性が高まる中、投機的な動きに巻き込まれないよう、リスク管理を徹底した上で、慎重な投資判断が求められる。単なる価格変動ではなく、地政学リスクがもたらすサプライチェーンの寸断や貿易摩擦といった複合的な影響を考慮した上で、事業継続計画(BCP)の再構築が急務となる。