中国の不動産市場で、地方政府や国有企業が主導する住宅の「下取り・買い替え」制度が全国的に拡大している。低迷する市場の安定化を目指し、中古住宅を買い取ることで市民の新築住宅への買い替えを促すのが狙いだ。新華社通信などが伝えた。
不動産市場の安定化へ、全国で「下取り」推進
浙江省麗水市は4月27日、国有企業が中古住宅200戸を買収する計画を発表した。これは、市民が新築住宅を購入する際の資金源を確保し、市場の流動性を高める不動産安定化策の一環だ。同市は以前から、国有企業による中古住宅の買い取りを通じた都市再開発を支援する方針を示していた。
上海市浦東新区でも、国有企業の上海浦東発展集団が中古住宅の「下取り・買い替え」事業を本格化させている。すでに2件の買収が完了し、十数件が交渉・評価段階にあるという。同市では、買い取った中古住宅を保障性賃貸住宅(低所得者向け住宅)に転換する取り組みも進んでいる。
補助金や税優遇も、多様なモデルで循環促す
「都市ごとの政策」に基づき、在庫削減と供給最適化を図るため、各地は多様なモデルで「下取り・買い替え」を推進している。広東省仏山市は4月20日、「委託販売」「買収・再販」「買収・活用」の3モデルを提示。参加者には個人所得税の還付や住宅ローンの優遇といった支援策を打ち出した。
同日、同省珠海市は、新築住宅購入価格の1%を補助する政策の期限を2026年末まで延長すると発表した。補助金の上限は1戸あたり3万元(約65万円)だ。こうした金銭的インセンティブにより、買い替え需要を直接的に刺激する。
専門家「在庫解消の突破口に」、サービス連携を提言
上海易居不動産研究院の厳躍進副院長は「政府や国有企業が中古住宅を買い取り、住民に新築購入を促すことで、中古と新築の循環が円滑になる」と分析。市場に一時的な回復の兆しが見られる中、この制度が在庫解消の重要な突破口になるとの見方を示す。
広東省住宅政策研究センターの李宇嘉首席研究員は、仲介業者やリフォーム会社、金融機関が連携したワンストップサービスの提供が重要だと提言。特に都市中心部の中古住宅は、国有企業が買収・改修して保障性賃貸住宅とすることで、市民生活の安定と市場活性化という二重の役割を果たすと期待されている。
日本への影響と今後の展望
中国の不動産市場における国有企業主導の「下取り」拡大は、日本企業にとって直接的な事業機会とリスクの両面を持つ。まず、中古住宅を買い取り、保障性賃貸住宅に転換する動きは、住宅設備や建材分野で新たな需要を生む可能性がある。特に、上海浦東発展集団が買収した中古住宅のリフォーム需要は、高機能な日本製の住宅設備や省エネ建材の輸出機会となりうる。
次に、広東省珠海市が新築住宅購入に最大3万元の補助金を2026年末まで延長する政策は、中国で事業展開する日本の住宅メーカーや関連企業にとって、販売促進の追い風となる。中国の消費者が住宅購入に際して金銭的インセンティブを受けることで、新築住宅市場の活性化が期待でき、日本の高品質な住宅資材や内装材への需要も喚起される可能性がある。
一方で、地方政府や国有企業が市場に直接介入するこの政策は、市場原理に基づく競争を歪めるリスクも孕む。例えば、浙江省麗水市が国有企業を通じて中古住宅200戸を買収する計画は、価格形成に影響を与え、民間デベロッパーの事業環境を複雑化させる可能性がある。日本の建設・不動産関連企業が中国市場で事業を拡大する際には、このような政府主導の市場介入がもたらす不確実性を慎重に見極める必要がある。