中国の通信機器大手ファーウェイの元幹部や社員が創業した企業が、相次いで株式市場に上場し、注目を集めている。半導体、AI演算能力、新エネルギーなど多岐にわたる分野で「ファーウェイ系」の存在感が高まっており、米国の制裁下にあるファーウェイ本体の戦略とも連動する動きとして注目される。
ファーウェイ系企業が続々上場
2026年に入り、「ファーウェイ系」企業の新規株式公開(IPO)が加速している。半月前には、ファーウェイの元スマート太陽光発電事業責任者だった許映童氏が創業した思格新エネルギー(Sigma Energy)が香港証券取引所のメインボードに上場した。初日に株価が103%以上高騰し、時価総額は1000億香港ドル(約2兆円)を突破。公募では1102倍の応募倍率を記録し、3500億香港ドル(約7兆円)を超える資金が凍結されるなど、2026年の香港市場IPOで過去最高を記録した。同社は創業から4年足らずで、蓄電システムの世界市場でトップシェアを獲得している。
思格新エネルギーの他にも、AI演算能力大手である超聚変(xFusion)が2026年1月に上場指導を開始し、4月には指導を完了した。ファーウェイのX86サーバー事業から独立した同社は、2024年に売上高435億元(約9000億円)を突破し、評価額は600億元(約1兆2000億円)を超えるとされ、中国A株市場への上場を急いでいる。また、ファーウェイの元エンジニア2人が共同創業したミリ波レーダーサプライヤーの承泰科学技術(Chengtai Technology)も、2026年2月に香港でのIPOが中国証券監督管理委員会に承認された。
中核を担う超聚変の急成長
「ファーウェイ系」の創業企業の中でも、超聚変は最も規模が大きく、戦略的な重要性が高い。同社は2021年9月、米国の制裁により半導体やソフトウェアの供給が途絶えたことを受け、ファーウェイがX86サーバー事業を切り離して設立された。河南省の国有資産が株式の過半数を保有し、ファーウェイのアジア太平洋地域部門の責任者だった劉宏雲氏が中核チームを率いて独立運営している。創業からわずか2年で、2024年の売上高は435億元に達し、2025年上半期には中国サーバー市場で2位に躍進したと新華社通信は伝えた。超聚変は2025年12月に上場指導契約を締結し、わずか3ヶ月半で指導を完了するという異例の速さでIPO準備を進めている。中国移動、中国電信、高瓴資本(Hillhouse Capital)、中金資本(CICC Capital)など、中国を代表する機関投資家が株主に名を連ねており、「AI演算能力国家隊」としての位置付けが明確になっている。
元社員創業企業の多様な展開
超聚変がファーウェイの事業部門の切り離しという形で誕生したのに対し、承泰科学技術はより典型的な「ファーウェイ出身者による創業」の事例だ。2016年、ファーウェイ中央研究院で技術主管を務めていた陳承文氏が、同じくファーウェイ出身の周珂氏と共同で深圳に設立した。同社は2025年6月に香港証券取引所に上場申請を行い、2026年2月に承認された。2025年の売上高は11億元(約220億円)を突破し、ミリ波レーダー市場での競争力を示している。思格新エネルギーの創業者である許映童氏もファーウェイに23年間勤務し、同社のスマート太陽光発電事業を立ち上げた人物である。これらの企業は、ファーウェイの技術的遺伝子とグローバルな視点を受け継ぎ、中国のテクノロジー産業の複数の主に分野で同時にに力を発揮している。
日本にとっての意味
「ファーウェイ系」企業のIPO加速は、日本企業にとって直接的な競合と新たな協業機会の両面で影響をもたらす。まず、思格新エネルギーが創業4年足らずで蓄電システムの世界市場トップシェアを獲得し、初日株価が103%高騰した事実は、日本の蓄電池メーカーにとって脅威となる。同社が持つ技術力と中国国内の巨大な市場、そして香港市場での巨額の資金調達能力は、日本の既存企業が競争優位を維持するための新たな戦略を迫るだろう。
次に、AI演算能力大手である超聚変の急成長は、日本のDX推進企業や半導体関連企業に影響を与える。2024年に売上高435億元を突破し、中国サーバー市場で2位に躍進した同社は、中国国内のAIインフラ構築において中心的な役割を担う。日本企業が中国市場でAI関連事業を展開する場合、超聚変との連携や、彼らが提供する技術スタックへの適応が不可欠となる可能性がある。
また、ミリ波レーダーサプライヤーの承泰科学技術の上場承認は、日本の車載レーダーや自動運転関連技術を持つ企業にとって、中国市場における競争激化を意味する。ファーウェイの元エンジニアが創業した同社は、技術力と中国市場への深い理解を武器に、日本企業のシェアを侵食する可能性がある。一方で、これらの「ファーウェイ系」企業が持つ技術や市場へのアクセスは、日本企業が中国市場で新たなビジネスチャンスを模索する上での提携先となり得る。特に、高瓴資本や中金資本といった中国の有力投資家が株主となっている企業との連携は、日本企業にとって中国市場への足がかりとなる可能性を秘めている。
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