ファーウェイ(ファーウェイ技術)は、スペイン・バルセロナで開催された「MWC Barcelona 2024」で、新たなAIソリューション「Agentic Core」を発表した。AI時代におけるネットワークの複雑化と需要の多様化に対応し、通信ネットワークの自律的な運用・制御を目指すものだ。
AIがネットワークを自律制御
「Agentic Core」は、AI時代に予測されるトラフィックの急増と、用途に応じた差別化されたネットワークへの需要に応えるために開発された。このソリューションは、「ネットワークインテリジェンス」「ビジネスインテリジェンス」「ネットワーク要素インテリジェンス」という3つの主にエンジンを搭載している。
これにより、ネットワーク全体の状態をリアルタイムで把握し、ビジネス要件に基づいてリソースを最適に配分することが可能になる。ファーウェイは、通信事業者がより効率的でインテリジェントなネットワークを構築できるよう支援するとしている。
AIエージェントが運用を自動化
本ソリューションの中核をなすのが、AIエージェントによる運用自動化だ。ネットワーク運用を、人間が設定した事前定義ルールに基づく従来の手法から、AIエージェントが自律的に判断・実行するモデルへと移行させる。
具体的には、「デジタルID」による通信対象の識別、「AIエージェントの登録と発見」機能、エージェント間の自律的な対話を行う「A2A(Agent-to-Agent)対話管理」などを導入。これにより、ビジネス要件の理解から動的なリソース割り当て、戦略の生成と設定展開までを自律的に行うエンドツーエンドのクローズドループを実現する。
フィジカルAI時代のインフラを構築
ファーウェイは、この技術がロボットや自動運転といった「フィジカルAI」が普及する未来の社会インフラに不可欠だと位置づけている。エッジAIの普及に伴い予測される10倍の接続数増加に対応するため、低遅延かつ高信頼性のネットワーク基盤を構築することが急務だと、同社は強調した。
「Agentic Core」は、こうした膨大な数のデバイスが自律的に連携する世界の実現を、ネットワーク側から支える重要な基盤技術となる。
日本の関連性
ファーウェイの「Agentic Core」発表は、日本の通信事業者や関連企業に直接的な影響を与える。第一に、フィジカルAI時代のインフラとして「10倍」の接続数増加と低遅延・高信頼性を掲げる同社の戦略は、日本の5G/Beyond 5Gインフラ競争に新たな基準を突きつける。NTTドコモやKDDIといった国内通信事業者は、ファーウェイのAI自律制御技術がもたらす運用効率化とサービス品質向上にどう対抗するか、具体的なロードマップを迫られるだろう。特に、AIエージェントによるA2A対話管理といった自律運用機能は、人件費高騰に直面する日本企業にとって魅力的ながら、技術導入の遅れは競争力低下に直結する。
第二に、ソニーやパナソニックなど、フィジカルAI領域で製品開発を進める日本企業は、「Agentic Core」が提供するネットワーク基盤への依存度を考慮する必要がある。ファーウェイが提唱する「フィジカルAI」時代のネットワークは、デバイスとネットワークが密接に連携する前提であり、日本のデバイスメーカーは、自社製品がこの自律制御ネットワーク環境で最適に機能するよう、互換性や連携戦略を早期に策定する必要がある。
最後に、日本のサイバーセキュリティ企業にとっては、AIによる自律制御ネットワークの普及は新たなビジネス機会とリスクの両方をもたらす。AIエージェント間の自律的な対話は効率化を進める一方で、新たな脆弱性や攻撃経路を生み出す可能性があり、これに対するセキュリティソリューション開発が急務となる。