米イラン間の緊張が高まる中、イランが「国宝」とによるとするドローン(無人機(ドローン))空母「シャヒド・バゲリ」が注目を集めている。米中央軍は同艦とみられる艦艇への攻撃映像を公開したが、期待された米空母との直接対決には至らなかった。その実態は、イラン海軍の野心と限界を示す象徴となっている。

米軍による攻撃映像

米中央軍が公開した作戦映像には、一隻の大型艦艇が十字照準に捉えられ、瞬時に爆発・炎上する様子が記録されていた。この艦艇が、イランが商船を改造して建造したドローン空母「シャヒド・バゲリ」であるとみられている。

同艦は、イラン海軍が新たな非対によると戦術を模索する上で重要な存在だった。しかし、その出自は商船でありながら空母の任務を与えられたという、構造的な矛盾を抱えていた。

商船改造の限界

「シャヒド・バゲリ」は、排水量約4万トンの貨物船を基に改造された。艦首にスキージャンプ台を設け、飛行甲板をほぼ全長にわたって設置。アレスティング・ワイヤー(制動索)や格納庫も備え、外観は軽空母に似ていた。

しかし、この低コスト・短期間での改造には明確な限界があった。もともと輸送効率を最優先に設計された商船の船体は、戦闘でのダメージを想定しておらず、防御力や抗堪性が著しく低い。また、近接防御用の機関砲しか搭載しておらず、艦隊防空を担うミサイルシステムも欠いている。実態としては、ドローンを運用するための洋上プラットフォームに過ぎなかった。

限定的な艦載機能力

搭載する航空戦力も、その能力は限定的だ。現在公開されている情報によれば、「シャヒド・バゲリ」が搭載する主なドローンは「JAS-313」「Ababil-3」「Mohajer-6」の3種類である。

「JAS-313」は、イランが開発したステルス戦闘機「F-313 コヘラ(征服者)」のドローン版とされるが、技術実証機の段階に近い。公開された画像には、機体の接合部にテープが貼られているなどの点も見られ、実用化には程遠いことを示唆している。

一方、「Ababil-3」は偵察任務、「Mohajer-6」は一定の偵察・攻撃能力を持つが、いずれも低速で生存性が低い。さらに、両機とも空中戦能力を持たないため、制空権が確保されていない海域では、正規空母の艦載機が担うような高度な作戦は実行不可能だ。

日本にとっての意味

イランのドローン空母「シャヒド・バゲリ」の事例は、日本の防衛産業とサプライチェーンに複数の示唆を与える。第一に、商船改造による低コスト・短期間での軍事転用は、有事における民生船舶の役割再考を促す。日本の海運各社が保有する大型貨物船やタンカーは、その排水量(「シャヒド・バゲリ」の約4万トン級)から、同様の改造ポテンシャルを持つ。これは、有事の際に自衛隊の輸送能力を補完する可能性を秘める一方、敵対勢力による民生船の軍事転用リスクも高める。

第二に、イラン製ドローン「JAS-313」の技術的未熟さや「Ababil-3」「Mohajer-6」の低速・低生存性は、日本のドローン技術開発における優位性を再確認させる。特に、海上自衛隊が将来的に運用を検討するであろう無人航空機(UAV)は、より高度なステルス性、高速性、そして電子戦能力が求められる。日本の防衛関連企業は、この技術的ギャップを維持・拡大することで、国際市場での競争力を高める機会がある。

第三に、「シャヒド・バゲリ」が近接防御用の機関砲しか持たず、艦隊防空ミサイルシステムを欠いている点は、日本のイージス艦や護衛艦が持つ高度な防空能力の重要性を際立たせる。有事の際、日本のシーレーン防衛において、正規の軍艦による広範囲な防空網の構築が不可欠であることを再認識させる。これは、防衛装備品の輸出戦略において、日本の統合防空ミサイルシステムやレーダー技術の優位性を強調する根拠となり得る。