中国で、高度1000メートル以下の空域を活用する「低空経済」が急速に発展している。今年の春節(旧正月)期間には、ヘリコプターによる遊覧飛行やドローンを使ったパフォーマンスが各地で人気を集め、新たな観光資源として注目された。政府も法規制やインフラ整備を本格化させており、関連産業は試験段階から本格的な事業展開へと移行しつつある。
観光・物流で実用化進む
広東省東莞市の松山湖では、ヘリコプターによる遊覧飛行が常態化している。利用者の林氏は「短時間で湖の全景を見渡せる素晴らしい体験だ」と語る。こうした空中観光は、これまで一部の富裕層向けだったが、より手軽なサービスとして一般に広がり始めた。
物流分野でも、大手EC企業などが山間部へのドローン配送を試験的に開始するなど、実用化に向けた動きが加速している。低空経済は、観光や物流のあり方を大きく変える可能性を秘めている。
政府主導で規制・インフラ整備を加速
産業の健全な発展に向け、政府は規制とインフラ整備を両輪で進める。2024年5月1日には、ドローンの実名登録を義務化する新たな規則が施行された。さらに、公共空域を飛行するドローンに対し、位置や速度などの情報をリアルタイムで報告する運用規範も導入。これにより、安全管理体制の強化を図る。
インフラ面では、工業情報化部など5部門が共同で指針を発表。2027年までに、低空域用の公共航路における地上通信網のカバー率を90%以上に引き上げる目標を掲げた。新華社通信によると、これには高精度のナビゲーションシステムや障害物検知能力の向上も含まれるという。これにより、ドローンや「空飛ぶクルマ」が安全に航行できる環境を構築する。
日本の関連性
中国の「低空経済」の発展は、日本の航空関連産業に直接的な影響を及ぼす。まず、ドローンや「空飛ぶクルマ」の機体開発・製造分野において、中国市場への参入機会が生まれる。中国政府が2027年までに低空域用公共航路の地上通信網カバー率を90%以上に引き上げる目標を掲げていることから、高精度ナビゲーションシステムや障害物検知技術を持つ日本企業には、インフラ整備への技術提供という形でビジネスチャンスがある。例えば、三菱電機や日立製作所のような企業は、自社の強みであるセンシング技術や通信技術を活かし、中国の低空経済インフラ構築に貢献できる可能性がある。
次に、観光分野では、中国のヘリコプター遊覧飛行やドローンパフォーマンスの活況は、日本の地方観光地における新たな観光コンテンツ開発のヒントとなる。特に、これまでアクセスが困難だった地域や、新たな視点での観光体験を求める富裕層向けに、同様の「空中観光」サービスを導入することで、インバウンド需要の掘り起こしが期待できる。
一方で、2024年5月1日に施行されたドローンの実名登録義務化や、リアルタイムでの位置情報報告義務は、中国市場に参入する日本企業にとって、データ管理やプライバシー保護に関する新たな課題を提起する。これらの規制に適合するためのシステム開発や運用体制の構築が必須となり、コンプライアンスコストの増加に繋がる可能性がある。