中国で低軌道衛星通信技術の開発が加速している。同分野で注目される上海譜域科学技術(Shanghai Phograin Tech)はこのほど、シリーズA+ラウンドで数千万元(約数億円)規模の資金調達を完了した。同社は低軌道衛星通信端末の開発に注力し、技術革新を進めている。

自社技術で多様な市場を開拓

上海譜域は、低軌道衛星通信端末の開発を事業の中核に拠える。自社開発の低軌道衛星向けベースバンドシステムとミリ波フェーズドアレイ技術を搭載した製品群が強みだ。同社の製品は、船舶や航空機への搭載、緊急時対応といった多様な用途で既に利用されている。

将来的には、民間航空、車載通信、グローバル専用線といった、より幅広い市場への展開を計画する。独自の技術力を武器に、拡大する衛星通信市場でのシェア獲得を目指す。

政府主導で商業宇宙市場が拡大

中国の商業宇宙産業は、政府の強力な後押しを受け、大きな成長が期待されている。2024年の政府活動報告では商業宇宙開発が初めて盛り込まれ、国家の戦略的新興産業としての地位が明確になった。同報告は商業宇宙の安全で健全な発展を推進すると強調しており、政策的な基盤が強化された。

現在、中国は国際電気通信連合(ITU)に対し、低軌道衛星5万1300基の軌道・周波数利用を申請している。「GWコンステレーション(国網)」や「G60 Starlink(千帆)」といった大規模な衛星コンステレーション計画が進行中だ。中国メディアは、これらのネットワークが完了すれば、端末市場は1000億元(約2兆円)規模に達する可能性があると報じている。

黎明期の市場で技術革新を主導

上海譜域の解安亮CEOは、現在の業界を「爆発的な成長を現在にした黎明期にある」と分析する。同氏は、技術と製品面での優位性を維持するため、自主開発と継続的な技術革新を重視する必要があると述べた。

同社は今後も「民間テクノロジー企業」としての特性を生かし、機動的な開発体制で業界の成長に貢献していく方針だ。

日本への影響

上海譜域の数千万元調達と中国政府主導の2兆円市場形成は、日本の宇宙産業に直接的な競争圧力と新たな協業機会をもたらす。まず、中国が国際電気通信連合(ITU)に申請した低軌道衛星5万1300基という規模は、日本の衛星通信事業者にとって無視できない脅威となる。特に、KDDIやソフトバンクが推進する低軌道衛星サービスは、中国の「GWコンステレーション」や「G60 Starlink」と周波数帯域や市場を巡って競合する可能性が高い。中国勢が低価格で広範なサービスを提供すれば、日本の既存事業者は価格競争力を問われることになるだろう。

次に、上海譜域が開発する船舶・航空機向け端末やミリ波フェーズドアレイ技術は、日本の部品メーカーやシステムインテグレーターにとって新たなサプライチェーン参入の機会となりうる。中国市場の2兆円規模は、日本企業が部品供給や共同開発で関与できれば、大きな収益源となる。例えば、村田製作所やTDKのような電子部品メーカーは、上海譜域のような中国スタートアップに対し、高信頼性・高性能な部品供給で差別化を図ることが可能だ。

最後に、中国政府が商業宇宙開発を国家戦略と位置付けたことで、日本の宇宙ベンチャーや研究機関は、中国との技術協力や共同研究を模索する選択肢も浮上する。ただし、技術流出リスクや地政学的要因を慎重に評価する必要がある。日本の宇宙産業は、中国の巨大な市場と技術革新のスピードを認識し、競争と協業のバランスを見極める戦略が求められる。