中国の金融テクノロジー大手Lufax Holding(陸金所控股)は、大規模言語モデル(LLM)を活用し顧客サービスを刷新、満足度を85%に向上させた。有人対応は14%削減され、同社のプロジェクトは中国情報通信研究院(CAICT)から高く評価された。
LLMで顧客体験を再構築、当局から高評価
Lufaxの消費者保護部門と平安グループ科学技術(Ping An Technology)が共同開発した「大規模言語モデルによるインクルーシブファイナンス顧客向けスマートサービス体験の再構築」プロジェクトが、CAICT主催の第5回「金信通」金融テクノロジー革新応用事例コンテストで、「金融テクノロジー革新応用・先進事例」に選出された。
このプロジェクトは、Lufaxの全社的AI戦略「AI in All」の中核をなす取り組みだ。同戦略は、AI技術を金融サービスのバリューチェーン全体に深く浸透させ、顧客サービスからリスク管理まで、あらゆる業務プロセスを再構築・最適化することを目的とする。
サービス効率と満足度が大幅向上
本プロジェクトは、従来のスマートカスタマーサービスが抱えていた主な3つの課題、すなわち「複雑な問題への対応力不足」「顧客の感情を認識する能力の欠如」「パーソナライズされたサービスの提供能力不足」の解決を目指した。
NLP(自然言語処理)の小規模モデルとLLMを組み合わせた「デュアルモード連携」技術アーキテクチャを採用。これにより、効率的な応答と顧客の感情に寄り添った対応を実現し、スマートカスタマーサービスの自己解決率が2ポイント向上した。さらに、オペレーターによる有人対応を14%削減し、顧客満足度が80%から85%へと5ポイント向上する成果を上げたと、同社は発表した。
監督当局と連携しAIの安全性を確保
LufaxはAI活用の推進と同時に、その安全性確保を重視している。監督当局の指導の下、独自のAI安全性管理体制を構築。アプリケーション、データ、モデル、アルゴリズムの安全性、さらにコンプライアンス運用の各側面において、AIガバナンスを徹底している。
この体制は、DeepSeekの大規模モデルと連携するリスク管理システム「インテリジェントシールド(智盾)」などにも適用されており、技術革新とリスク管理の両立を図る姿勢を明確にしている。
日本市場への影響
LufaxのLLM活用による顧客サービス刷新は、日本の金融機関にとって、業務効率化と顧客体験向上における具体的な機会を示唆する。特に、有人対応を14%削減しつつ顧客満足度を85%に向上させた点は、人手不足に直面する日本の金融機関がAI導入で得られるメリットを明確に提示する。例えば、地方銀行や信用金庫では、コールセンター業務のAI化により、限られた人員をより高度なコンサルティング業務に再配置できる可能性がある。
また、中国情報通信研究院(CAICT)から高く評価されたLufaxのプロジェクトは、金融分野におけるAI活用の「ベストプラクティス」として、日本企業が参照すべきモデルとなり得る。特に、NLPとLLMを組み合わせた「デュアルモード連携」技術は、複雑な顧客問い合わせへの対応力を高める上で有効であり、三井住友銀行や三菱UFJ銀行といった大手行が、顧客サービス高度化に導入を検討する価値がある。
一方で、Lufaxが監督当局と連携し、AI安全性管理体制を構築している点は、日本企業がAI導入を進める上で見過ごせないリスク管理の側面を強調する。DeepSeekの大規模モデルと連携する「インテリジェントシールド」のようなリスク管理システムは、個人情報保護やサイバーセキュリティの観点から、日本国内でのAI導入におけるガバナンス構築の重要性を再認識させる。金融庁がAI利用ガイドラインを策定する際、中国の先行事例からリスク管理の教訓を学ぶべきである。