2月に開催されたミュンヘン安全保障会議では、米国の政治動向を背景に、欧州独自の安全保障体制構築が主に議題となった。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、欧州各国は「米国依存」からの脱却を迫られている。

揺らぐ「米国依存」の秩序

第二次世界大戦後、欧州の安全保障は北大西洋条約機構(NATO)を軸とする米国主導の体制に支えられてきた。しかし、11月の米大統領選でトランプ前大統領が返り咲く可能性が浮上し、この体制が大きく揺らいでいる。

トランプ氏は在任中、NATO加盟国に防衛費の負担増を強く要求。最近も、防衛費が国内総生産(GDP)比2%の目標に満たない国は「ロシアの侵攻から守らない」と発言し、欧州に衝撃が走った。会議では、こうした米国の内向き志向への危機感が共有されたと、複数の欧州メディアが報じている。

「戦略的自律」への険しい道

こうした状況を受け、欧州連合(EU)内では「戦略的自律」を強化する動きが加速している。フランスのマクロン大統領が提唱してきた構想で、防衛産業の基盤強化や共同での武器調達などが柱となる。

しかし、各国の足並みはそろっていない。ウクライナへの支援疲れや、財政難を背景に防衛費増額に慎重な国も多い。ミュンヘン安全保障会議が発表した報告書は、国際協調が失われれば全ての国が敗者になりかねない「Lose-Lose」の状況に陥ると警鐘を鳴らした。

結論:日本への示唆

ミュンヘン安保会議で示された欧州の「戦略的自律」模索は、日本の対中戦略に直接的な影響を及ぼす。まず、米国が内向き志向を強め、NATO加盟国への防衛費負担増を要求し、GDP比2%未満の国はロシアの侵攻から守らないとまで言及している点は、アジアにおける米国の関与度低下を示唆する。これにより、東シナ海や南シナ海における中国の海洋進出に対し、米国がこれまで通りの抑止力を維持できるか不透明になる。日本は、尖閣諸島など係争地域での中国の動きに対し、自衛隊の防衛能力強化を加速させる必要性が高まる。

次に、フランスのマクロン大統領が提唱する「戦略的自律」は、欧州が防衛産業の基盤強化や共同での武器調達を進める可能性を示す。これは、日本の防衛産業にとって新たな輸出市場開拓の機会となり得る。特に、欧州各国が米国製兵器への依存を減らし、自国開発や域内協力を重視する傾向が強まれば、日本の高度な技術を持つ防衛関連企業が欧州市場に参入するチャンスが生まれる。

最後に、ミュンヘン安保会議の報告書が警鐘を鳴らす「Lose-Lose」の状況は、国際協調の重要性を再認識させる。中国が経済的・軍事的に台頭する中で、日本は欧州との安全保障対話を強化し、共通の価値観に基づく連携を深めることで、多国間主義の維持に貢献できる。これは、米国一極集中ではない、より多様な安全保障協力の枠組みを構築する上で重要となる。