2026年4月末、世界のエネルギー市場で緊張が高まっている。国際指標である北海ブレント原油先物(6月限)は、一時1バレル=122ドルの大台を突破し、紛争開始以来の最高値を更新した。トランプ前米大統領によるイランへの強硬な発言と、世界の石油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖が長期化するとの懸念が、供給リスクを極限まで高めている。
トランプ氏のSNS発言が市場を揺さぶる
今回の急騰の引き金となったのは、トランプ氏がSNS上で行った「最終通告」とも取れる発言だ。「核合意の余地はない」「もう『いい人』でいるのは終わりだ」といった挑発的な言葉に加え、米当局者の証言によると、同氏はイランの財政基盤を根底から破壊するため、長期的な海峡封鎖措置を視野に動いているとされる。
市場はこれまでトランプ氏の言動を静観してきたが、ホルムズ海峡の航行船舶数がピーク時の10%以下にまで激減している実態を前に、警戒感は極限に達している。イラン側との実質的な妥協点が見えない中、市場の強気な姿勢は崩れる兆しを見せていない。
OPECプラスに亀裂、UAE脱退説も浮上
地政学リスクをさらに複雑にしているのが、産油国連合「OPECプラス」の足並みの乱れだ。アラブ首長国連邦(UAE)が独自の生産方針を追求するため脱退するとの観測に対し、ロシアのシルアノフ財務相は「(OPECプラスという)メカニズムの終焉は望まない」と強い懸念を表明したと、ロイター通信は伝えている。
各国が自由増産に踏み切れば将来的には価格下落要因となる。しかし、現時点ではUAEと米国の同盟強化を巡るイランとの対立が激化。供給不安を緩和するどころか、中東全体の紛争拡大リスクを増幅させる結果となっている。
供給断絶なら150ドル超えも現実に
現在の焦点は、ホルムズ海峡の封鎖が5月末まで継続するか否かだ。もしこのまま供給中断が続けば、石油市場は紛争開始からの3ヶ月間で約18億バレルという膨大な供給量を失うことになる。
この「供給空白」が現実のものとなれば、原油価格は150ドルの大台、あるいはそれ以上の未知の領域へと高騰する可能性が極めて高い。2026年のエネルギー市場は、かつてない激動の年となることを示唆している。
日本市場への影響
今回の北海ブレント原油先物1バレル=122ドル突破は、日本経済に直接的な打撃を与える。日本は原油輸入の約9割を中東に依存しており、ホルムズ海峡の長期封鎖は、エネルギー供給の途絶という極めて深刻な事態を招く。特に、紛争開始からの3ヶ月間で約18億バレルもの供給量が失われるという試算は、日本企業の製造コスト高騰と物流停滞を不可避にする。
具体的には、日本郵船や川崎汽船といった海運各社は、中東航路の運航リスク増大と保険料高騰に直面し、輸送コストを製品価格に転嫁せざるを得なくなる。これは、自動車や電子部品など、サプライチェーンの最終段階で海運に依存する日本製品の国際競争力低下に直結する。
また、UAEのOPECプラス脱退観測は、中東地域の不安定化をさらに加速させ、日本の外交戦略にも影響を及ぼす。日本はこれまで中東産油国との安定的な関係構築に努めてきたが、米国とUAEの同盟強化によるイランとの対立激化は、日本が特定の陣営に与することなく、中立的な立場を維持することの困難さを浮き彫りにする。
この状況下で、日本政府は、国家備蓄の放出や、再生可能エネルギーへの投資加速といった緊急対策を講じるだけでなく、中東地域の安定化に向けた外交努力を強化する必要がある。特に、イランとの対話ルートを維持し、ホルムズ海峡の安全な航行を確保するための多国間協力の枠組みを模索することが喫緊の課題となる。