オープンソースのAIアシスタント「OpenClaw」が、中国の技術コミュニティで一時的なブームとなった。24時間稼働するAIアシスタントとして注目を集めたが、その運用コストの高さから多くのユーザーが利用を断念している。一方で、特定の開発業務においては費用対効果を実証する事例も出ており、その実態が議論を呼んでいる。
高額な「育成」コストが課題に
OpenClawは、それ自体が大規模な知能を持つわけではなく、外部のGPTや中国Moonshot AI社の「Kimi」といった大規模言語モデル(LLM)のAPIに接続して機能する。ユーザーが指示を出すたびに、API提供者へトークン単位の利用料が発生する仕組みだ。さらに、対話履歴などの「記憶」が増えるほど、一度の応答で消費するトークン量が増加し、コストが膨らんでいく。
このコスト構造は、中国のユーザーの間で「養虾(エビの養殖)」と比喩的に呼ばれた。当初の熱狂は冷め、多くの個人ユーザーが継続的な費用負担を理由にOpenClawをアンインストールする事態となっている。
開発現場では費用対効果を実証
高コストという課題がある一方、ビジネスの現場ではその価値を証明するケースも報告されている。ある開発者、王京京氏は、40日間の実験で5000元(約10万8000円)以上をOpenClawに費やした。同氏は、数百ページに及ぶPDF資料の読解や機械学習のタスクをOpenClawに実行させたところ、高い性能が確認できたという。
王氏のチームはこのAIアシスタントを活用し、通常よりも短いわずか3日間で顧客向けのウェブサイトを構築することに成功。結果として、人間が作業した場合と比較して数万元(数十万円)規模のコストを削減できたと、中国メディア36Krは伝えている。これは、特定の専門業務においてOpenClawが強力なツールとなり得ることを示唆している。
日本への影響
「OpenClaw」の事例は、AIの運用コストが中国市場で顕在化し、日本企業にとって新たなビジネス機会とリスクをもたらす。まず、中国の個人ユーザーが「養虾」と揶揄する高額なトークン利用料は、日本企業が中国市場でAIサービスを展開する際の価格戦略に影響を与える。特に、月額課金モデルや無料利用枠の設定において、ユーザーの継続利用を促す工夫が不可欠となる。
次に、王京京氏が40日間で5000元(約10万8000円)以上を費やし、わずか3日間でウェブサイトを構築した事例は、特定の専門業務におけるAIの費用対効果を明確に示している。これは、日本のITサービス企業が、中国のAI開発ツールを活用し、短期間で高品質なソリューションを低コストで提供できる可能性を示唆する。例えば、日本のシステムインテグレーターが、中国のLLMであるMoonshot AI社の「Kimi」や他のオープンソースAIを組み合わせ、開発期間の大幅短縮とコスト削減を実現し、競争優位を確立できる。
一方で、OpenClawが外部のLLMに依存する構造は、日本企業が中国のAIエコシステムに深く関与する際のリスクも提示する。特定のプロバイダーへの依存は、API利用料の変動やサービス停止のリスクを伴うため、複数のLLMプロバイダーとの連携や、自社での基盤モデル開発への投資も視野に入れる必要がある。