中国のAIロボット開発スタートアップ、千訣科学技術(Qianjue Tech)がこのほど、プレA++ラウンドの資金調達を完了した。調達資金は、実物大ヒューマノイドロボットの量産や自動化されたデータパイプラインの構築、中核チームの拡充に充てる計画だ。祥峰投資(Vertex Ventures)や智路資本(Wise Road Capital)などが出資した。

エンボディードAIで自律型ロボットを開発

2023年設立の千訣科学技術は、エンボディードAI(身体性を持つAI)技術を基盤とするワールドモデルの開発を手がける。同社のAI基盤「エンボディード・ブレイン」は、遠隔操作やルールベースのプログラミングを必要とせず、ロボットの自律的な作業を可能にする。現在は家庭用ロボットや小型ヒューマノイドロボットなどの製品開発を進めている。

データパイプラインでモデルを高速最適化

同社は、ロボットAIの性能向上に不可欠なデータパイプラインの構築にも注力している。構築中の自動化データパイプラインは、特定の状況下における平均精度の変動を自動で検知し、AIモデルを迅速に微調整整する機能を備える。これにより、ロボットの知能を効率的に拡張できるとしている。

創業者の高海川氏は、『データパイプラインの構築はロボットAIの発展における重要なステップだ』と述べ、幅広い分野への応用を目指す考えを示した。今回の資金調達には、前述の投資機関に加え、英諾天使基金(Innoangel)や鈞山資本(Junsan Capital)など複数の著名な投資機関が参加したと、中国の複数の技術系メディアが報じている。

まとめ:日本への示唆

千訣科学技術のプレA++資金調達は、日本企業にとって二つの具体的なリスクと一つの機会を提示する。まず、同社が実物大ヒューマノイドロボットの「量産」を目指すことは、産業用ロボット分野における日本の優位性を揺るがす可能性がある。安川電機やファナックといった日本の主要ロボットメーカーは、高精度・高品質な製品で世界市場をリードしてきたが、中国勢がエンボディードAIとデータパイプラインによる高速最適化を武器に低コストでの量産体制を確立すれば、価格競争力が低下し、市場シェアを奪われる恐れがある。

次に、千訣科学技術が「遠隔操作やルールベースのプログラミングを必要とせず、ロボットの自律的な作業を可能にする」エンボディードAIを開発している点は、日本企業のサプライチェーン再編を促すだろう。これまで日本企業が中国に生産拠点を設ける主な理由の一つは、安価な労働力確保だった。しかし、自律型ロボットが普及すれば、人件費のメリットが薄れ、生産拠点の国内回帰や東南アジアへの移転を検討せざるを得なくなる。

一方で、同社の技術は日本企業にとって新たな協業の機会も生む。特に、千訣科学技術が構築する「自動化データパイプライン」は、AIモデルの迅速な微調整を可能にし、ロボットの知能を効率的に拡張する。これは、日本の製造業が抱える熟練工不足の解消や、生産ラインの柔軟性向上に貢献しうる。日本の製造業は、この中国発のAI技術を自社の生産プロセスに組み込むことで、競争力を維持・強化できる可能性がある。