中国のAIロボット企業であるSAGE(飒智智能)がこのほど、シリーズA++およびシリーズA+++ラウンドの資金調達を完了し、累計調達額が数億元に達したことが分かった。米国の半導体関連の制裁が続くなか、同社は調達資金を技術の研究開発、海外市場の拡大、スマート製造生産ラインの建設に充てる方針だ。
独自のAIロボットで差別化
SAGEの主力製品は、シングルアーム、デュアルアーム、クアッドアーム(4本腕)ロボットやAMR(自律走行搬送ロボット)だ。同社は独自開発したロボットOS「SAGE-OS」と統合コントローラー「SAGE-Brain」により、従来の産業用オートメーションにおける柔軟性や知能化の課題解決を目指している。
技術面では、「個体知能・群知能・大規模知能」という3層の技術体系を構築。視覚、力覚、音声などを組み合わせたマルチモーダルセンシングにより、複雑な対象物の認識と位置決めを行う。独自開発の大規模モデル「VLAS」や低レベルモーション制御アルゴリズム、マルチアーム協調プランニング技術を駆使し、動的な産業環境下でミリメートル単位の精密な組立・検査作業を実現した。
「身体性AI」で多品種少量生産に対応
SAGEの創業者兼CEOである張建政氏は、上海交通大学でロボット工学の博士号を取得し、産業用ロボット世界大手ファナックでの勤務経験を持つ。同氏は36Krの取材に対し、従来の固定型ロボットが自動車の溶接など連続生産に適している一方、SAGEのロボットは製造業の7割を占めるディスクリート製造(組立製造)分野をターゲットにしていると語った。
特に新興EVメーカーなどで主流となっている「多品種少量生産(フレキシブル生産)」では、固定式のロボットでは対応が難しい。SAGEは、移動能力を持つ「身体性AI(エンボディドAI)」ロボットでこの需要に応える。オープンで非構造化された環境でも、ロボットが自律的に状況を認識し、経路を計画、作業を実行できる点が最大の差別化要因だ。
黒字化達成と今後の成長戦略
SAGEはすでに数年間にわたり黒字経営を続けており、近年の売上高は50%〜120%の年間成長率を維持。来年は300%の成長を見込んでいる。現在の年間出荷台数は約1,000台だが、生産能力を積極的に拡大し、年間5,000台の生産体制を目指す。
同社は「トップ企業を掴み、ベンチマークを確立し、販路を拓く」戦略を掲げ、すでにLi Auto(リ・オート)(Li Auto)、ジョンソン・エンド・ジョンソン、三菱電機といった大手企業のプロジェクトを成功させている。これを足がかりに、幅広い中堅・中小顧客への横展開を進め、スケーラブルな成長モデルの確立を狙う。
日本にとっての意味
SAGEの成長は、米国の半導体制裁下でも中国が独自技術で製造業のスマート化を進める現実を突きつける。日本企業にとって、これは単なる競争激化以上の意味を持つ。まず、Li Autoや三菱電機といった大手企業がSAGEのロボットを採用している事実は、その技術が特定のニッチに留まらず、広範な産業で実用レベルに達していることを示す。特に、多品種少量生産に対応する「身体性AI」ロボットは、日本の自動車産業や電機メーカーが抱える生産柔軟性向上の課題解決に直接的に寄与しうる。
次に、SAGEが年間1,000台の出荷から5,000台体制への拡大を目指し、来年には300%の成長を見込むことは、中国国内におけるAIロボット市場の爆発的な需要を裏付ける。日本のロボットメーカーは、これまで培ってきた技術的優位性を過信せず、SAGE-OSやVLASといった中国独自のOS・大規模モデルの進化を注視し、中国市場での競争戦略を再構築する必要がある。例えば、SAGEがターゲットとするディスクリート製造分野における協業や、日本企業が強みを持つ精密部品製造におけるAIロボットの応用など、新たなビジネス機会を探るべきだ。