2026年5月、グローバル市場と中国経済の勢力図が劇的に塗り替えられています。サムスン電子による中国本土での家電販売停止という衝撃的なニュースの一方で、香港の大富豪・李嘉誠氏は欧州資産の現金化を加速。さらに、中国のAIスタートアップMoonshot AI(ムーンショットAI)が評価額200億米ドル(約3.1兆円)を突破するなど、資本と技術の流動がかつてないスピードで進んでいます。

サムスン家電の中国撤退:外資ブランド苦境の象徴

サムスン電子は5月6日、中国本土市場におけるテレビ、モニターを含む全ての家電製品の販売を停止すると発表しました。

  • 背景: 急速に変化する市場環境と、ハイアール(Haier)やハイセンス(Hisense)など地元中国メーカーとの激しい価格・技術競争が背景にあります。サムスンの中国TV市場シェアは1桁台に低迷していました。
  • スマホ事業は継続: 家電からは撤退するものの、スマートフォン事業については従来通り継続。既存の家電ユーザーに対しては、中国の法律に基づきアフターサービスを保証するとしています。

李嘉誠氏の戦略的転換:英通信資産を約9,100億円で売却

香港の「超人」と称される李嘉誠氏率いる長江和記実業(CKハチソン)は、イギリスの通信事業「Vodafone Three」の全保有株式(49%)をボーダフォン(Vodafone)に売却することで合意しました。

  • 現金化の規模: 43億英ポンド(約455億香港ドル/約9,100億円)という巨額の対価を手にします。
  • 示唆: 李氏は長年、イギリスへの巨額投資で知られてきましたが、このタイミングでの大規模な現金化は、欧州市場の成長鈍化やグローバルなポートフォリオ再編の兆候と見られています。

中国AI・EV勢の猛追:評価額4倍、受注8万台の熱狂

外資の撤退とは対照的に、中国のハイテク新興勢力は莫大な資本を引き寄せています。

  • Moonshot AIKimi): 大規模言語モデル「Kimi」を展開する同社は、新たに20億米ドル(約3,100億円)を調達。わずか半年で評価額は4倍の200億米ドル(約3.1兆円)を超え、中国で最も豊富な資金力を持つAI企業となりました。
  • シャオミEV「SU7」: 初の電気自動車(EV)「SU7」が、発売わずか48日で受注確定台数8万台を突破。4月単月での納車数も3万台を超えるなど、テック企業の自動車参入として異例の成功を収めています。

李嘉誠氏は誰?

李嘉誠(リ・カーシン、英語: Li Ka-shing)氏は、香港を代表する国際的実業家・投資家・慈善家で、「李超人(スーパーマン)」の異名を持つ香港(および長年アジア)有数の富豪です。

  • 基本プロフィール
  • 生年月日: 1928年7月29日(2026年現在97〜98歳)
  • 出生地: 中国・広東省潮州市潮安県(潮州人)
  • 国籍: 香港(中国籍)
  • 主な肩書き: 長江実業グループ(CK Hutchison Holdings / CK Asset Holdings)の創業者・元会長、現在はシニアアドバイザー
  • 愛称: 李超人(スーパーマン)、誠哥(誠兄)
  • 生い立ち(苦労人からの一代成り上がり)

1940年(12歳頃)、日中戦争を逃れて家族で香港へ移住。父親が結核で亡くなり、15歳で学校を中退。プラスチック工場で16時間労働の苦学生時代を過ごします。1950年に親族から借金して長江塑膠廠(Cheung Kong Industries)を創業し、プラスチック花の製造からスタート。1960年代に不動産へ進出、1970年代に上場し、1979年に英資企業「和記黄埔」を買収して一躍香港の頂点に上り詰めました。

  • 事業帝国
  • 長江グループ(CK Group): 不動産、港湾、小売(A.S. Watson)、エネルギー、通信、インフラ、メディアなど多角化。
  • 世界50カ国以上に事業展開、従業員数十万人規模。
  • 引退後もHorizons Venturesを通じてAI、バイオ、医療テック(例: HistoSonics)などに積極投資。
  • 2026年現在も香港首富(Forbes香港富豪榜1位、資産約451億米ドル/約3,517億香港ドル前後)。
  • 家族
  • 妻: 莊月明(1990年没)
  • 長男: 李澤鉅(Victor Li) - 長江グループ現会長
  • 次男: 李澤楷(Richard Li) - 電訊盈科(PCCW)など独自事業
  • その他の特徴
  • 慈善活動: 李嘉誠基金会を通じて教育・医療に巨額寄付(香港大学・汕頭大学など)。
  • 投資哲学: 「低く買って高く売る」「トレンドを見極める」ことで知られ、ZoomやSpotifyなど早期投資でも有名。
  • 2018年に正式引退しましたが、依然として影響力は絶大です。

香港の経済発展の象徴であり、中国本土・欧米をつなぐビジネスパーソンとして世界的に尊敬を集めています。日本では知名度がやや低めですが、香港旅行やビジネスでは必ず名前が出てくる人物です!

日本への影響と示唆:日本企業が直面する「生存」と「適応」の壁

一連の動きは、中国市場がもはや「外資がブランド力だけで稼げる場所」ではないことを如実に物語っています。

  • 「撤退」と「集中」の冷徹な判断: サムスンの家電撤退は、利益率の低い市場からの迅速なリソース引き揚げという点で教訓的です。日本企業も、シェア争いではなく、自社が圧倒的に勝てる「ニッチな高付加価値領域」や「半導体・部品」へ資源を集中させる大胆な戦略転換が求められます。
  • AI実装速度の圧倒的格差: Moonshot AIの評価額高騰は、中国におけるAIの実装・商用化への期待値の高さを示しています。日本企業は、基盤モデル開発で後塵を拝する中で、いかに「製造業×AI」や「ヘルスケア×AI」といった特定分野での実装速度を上げるかが鍵となります。
  • EV市場の「知能化」競争: シャオミの成功は、自動車がもはや「移動体」ではなく「走るコンピュータ」であることを証明しました。日本の自動車産業は、ハードウェアの完成度を維持しつつ、ソフトウェアやエコシステムの構築において、中国勢の圧倒的な開発スピードに対抗するアライアンスを組む必要があります。